▼湯気と中華であそぶ|第8回
「朝夕」という屋号で料理を探求しているりえさんに、月に1度、その時の探求結果を発表してもらう場を設けました。その名も『お料理あそび』。野菜や野草や、季節の香り。軽やかに地球の素材を楽しむりえさんの、その旅路をお裾分けします。
朝夕の松井理恵です。
日々、素材やお料理を探求し、お料理教室をしたり、ときどきお料理を振る舞ったりしています。
第8回目を迎えましたが、実は、この記事にて最終回を迎えることとなりました。
楽しみに読んでくださっていた皆様、本当にありがとうございました!連載は終了しても、お料理探究は続きます。皆さんも一緒に、お料理あそび、楽しんでいきましょうね。
最終回、12月のテーマは「湯気と中華であそぶ」。
すっかり寒くなった冬にぴったりのお料理あそびをお届けします。
Tips1/包むって、とっても自由
突然ですが、「包むってすごい」と、いつも思います。
お料理教室のテーマは「湯気と中華」だったのですが、今回お伝えしたのは、「肉まん」と「焼売」。
どちらも、包んで、湯気で蒸すお料理です。
しかも、季節の食材も、香りも旨味も湯気も、すべて包み込むから、とっても自由度が高い!
「お料理あそび」にぴったりのお料理です。
今回は、その中でも「肉まん」にフォーカスしてお伝えしますね。
〈肉まんのマインドマップ〉
マインドマップを見ていただいただけでも、これだけ中身の餡の展開があります。
しかも、皮をこねて少し置いて発酵させたら、刻んだ食材をくるくるっと包むだけ。
「肉まんを自分でつくるのはハードルが高い」というイメージもあるかもしれませんが、実はとっても簡単です。
組み合わせ次第でどんなテイストにも変身して、子どもから大人まで楽しめるのが肉まんの魅力。
叩いた山芋を入れても軽やかだし、青菜をさっと茹でて刻んだりしてもいい。春は筍、新玉ねぎなどみずみずしいものに変えると美味しそう…! 子どもが好きな具材をたっぷり入れて見てもいいし、お酒のつまみになるような、大人なテイストにしてもいい。
皆さんも、どんどん想像して、いろんな肉まんをつくってみてほしいな、と思います。
Tips 2/ 季節を包む
今回のお料理教室で、一緒に包み込んだのは「きのこ」。
きのこは、1種類でなく3種類くらいの方が、良い出汁が出ます。特に、椎茸や舞茸、エノキ茸は旨みがあるのでおすすめです。
珍しいきのこを一緒に包むのも楽しいです。もし手に入るなら、ポルチーニ茸、香茸などを入れると、肉まんを手で割ったときに、贅沢な香りがふわっと広がります。
完全な微塵切りではなく、少し荒めに刻むといいですね。
ちなみに、私は、肉まんの「お肉」も、ひき肉ではなく、薄切り肉を刻んで叩いたものを使うのが好き。その方が、お肉の食感が残って美味しいのです。
こっくりした感じがお好みなら、脂の多い豚バラを、さっぱりが好きなら豚カタロースを。
肉まんの生地が勝手に肉汁を閉じ込めてくれるので、本当に簡単に美味しく出来上がります。
きのこ肉まん
【材料】4個分
《生地》
薄力粉 100g
ドライイースト
a 粗糖 小さじ1 塩 ひとつまみ
小さじ 1/2
+ぬるま湯大さじ1
b ぬるま湯 35g 太白ごま油 小さじ1
《具材》
豚細切れ肉または豚バラ薄切り肉 90g
きのこ 60g*
生姜(みじん切りまたはおろす) 5g
醤油 大さじ 2/3
酒 小さじ1
胡椒 少々 太白ごま油 小さじ1 粗糖 ふたつまみ
*きのこ・・・椎茸、舞茸、エリンギ、霜降りひらたけ、 えのき、山伏茸、たもぎ茸など 2,3種取り合わせる
【作りかた】
1 イーストは大さじ1のぬるま湯で溶かし、 粉はふるうかホイッパーで混ぜボウルに入れる。
2 a を合わせ、b を加え菜箸でポロポロするまで混ぜる
3 手で表面がなめらかになるまでこねる
4 ラップをして暖かい場所で 30-40分 1次発酵(倍くらい)
5 発酵させている間に餡を作る。豚肉は細かく刻みたたく。他 の食材は細かく刻み準備する。
※発酵させる場所は、ストーブや暖房の近く、キッチンの近くなど。 熱は高いところに上がるので、高めのところにおいても◉
6 打ち粉をを振った板の上に出し、4等分にする。
7 綿棒で伸ばし餡を包み、オーブンシートを敷いた蒸篭に乗せ 15 分ほど 2次発酵
8 強火で蒸気が上がってから 13分蒸す。お好みで黑酢を少々。
もちろん、きのこを他の食材に変えたりしてもOK。黒酢につけて食べたりしても美味しいです。
冷凍すると2ヶ月ほど持つので、多めにつくって簡単なおやつのストックにしても◎。1つずつラップをして保存バッグへ入れておき、食べたいときに蒸し直すと、またホカホカの肉まんになります。
そして、いろんなものを隠し込めるのが、肉まんの楽しいところ。
例えば、柚子の皮を入れれば、開けたときに柚子が香るし、大和当帰を入れたらセロリのような甘い香りがして、豚肉にもぴったり。
きのこにモッツァレラチーズやカマンベールチーズを合わせて胡椒を効かせれば、“ワインに合う肉まん”にもなります。
豚肉の代わりにラム肉を使っても美味しそう…!
こんなふうにどんどん展開できてしまうので、包むお料理あそびは本当に楽しいですよ。
Tips 3/軽やかに、爽やかにあそぶ
最後に、私がお料理において、大切にしていることをお伝えしようと思います。
それは、「つくる人も、食べる人も、軽やかに」。
私が好きなお料理は、簡単に楽しく、あそぶようにつくれるもの。
そして、軽やかでみずみずしい後味のもの。食べたあとに心地よく感じるもの。
仕事や育児に忙しい人の負担にならないお料理を、つくることで癒されるお料理を提案できたら良いな、と思っています。
今回の、包んで蒸す「湯気と中華」もそうですが、土台(=基本のつくり方や知識)があれば、展開(=あそび)は、自然と起きてきます。
土台さえあれば、いくらでも軽やかにあそべるのが、お料理の楽しいところ。これは、お料理だけでなく、すべてのことに言えることかもしれませんね。
さて、これで私の連載は最後となります。
私はこれからもお料理あそびを探求しておりますので、もしよければご一緒しましょう。
PROFILE
松井理恵
「朝夕」主宰 | 料理研究家
三重県生まれ。様々な食の仕事を経験後、味と香りの幅を広げるためドイツに2年半滞在し、表現としての食のあり方に触れる。現在は滋賀県を拠点に「朝夕」という屋号で料理教室、料理会、レシピ開発、食まわりのコーディネートなどを行なう。