▼7月はディル風味のピクルス | 第5回
ハーバリストである葉子さんの「くらしを綴る植物たち」をご紹介するコラム連載。葉子さんが暮らしと研究を行う京都のハーブガーデンから、毎月、暮らしに寄り添った季節のハーブ処方と、その楽しみ方をお届けします。
京都の夏は、祇園祭と共にやってきます。雲の形が力強くなると、太陽を待ちわびていたハーブの成長は勢いを増し、香りも濃密になっていきます。
今日のハーブのお楽しみは?
今年もディル風味のピクルスを作る夏がやってきました。ディルは1mを超えるセリ科のハーブ。スーパーでも手軽に手に入る初夏から夏のハーブですね。
爽やかで旨味溢れる風味は、リーフよりもさらに種子で楽しめます。ミネラルが豊富で不飽和脂肪酸を含む種子は、減塩効果の高さが知られていて、特にレモンときゅうりとすりつぶしたディルシードのマリネはとても爽やかな「しゃっくり止め」として食されてきました。
花はレースフラワーに似た形に黄色の小花が咲き、小花の全てがたわわに結実します。枝ごと収穫し追熟すると、種子はふっくらと太り、一粒カリっと歯に充てると、口いっぱいに広がる芳醇な旨味に驚きを隠せません。
〈夏野菜のピクルス(ピクルスビネガー)〉
※500ml容器1ビン分
ビネガー(リンゴ酢・米酢など)200ml
お水100ml 蜂蜜大さじ1.5
(スパイス&ハーブ)
ディルシード小さじ0.5 マスタードシード小さじ0.5 シナモン1/2本 ベイリーフ1枚
クローブ1個 ブラックペパー6粒
オールスパイス3粒 にんにく1/2片
(野菜)
パプリカ きゅうり 人参 カリフラワー
大根 レンコンなど
1.ピクルスビネガーの材料とスパイスを片手鍋に入れ中火で熱する。沸騰後弱火でさらに10分煮て火を止める。
2.野菜はお好みの形状に切る。
3.水分の多い野菜(大根や人参、きゅうり)は振り塩をして15~20分置きよく水洗いする。
4.野菜の水分を丁寧にふき取る。
5.ビンに野菜をしっかりと入れる。
※少し圧がかかるように詰め込む
6.スパイスごと、熱々のビネガーを野菜がきちんと浸る程度に注ぎ蓋をする。
7.半日以上常温で管理し、冷蔵庫で冷たく冷やす。
3日目からが食べ頃です。
ピクルスの想い出
娘の夏休みに、家の近くの貸農園までお散歩すると、農園の方がくるくる曲がったキュウリや、葉っぱだらけの人参、丸く太ってしまった大根などを娘に持たせてくださいました。
「お味噌汁にしようか?それともピクルス?」ピクルスという言葉に目が一回り大きくなって、帰り道は小走りになる娘。
早速、三角巾とエプロンを装着したシェフの登場です。小さなシェフが曲がりくねったキュウリをいろんな角度からじっくり観察した結果、野菜は全部「可愛いかたち」のままのピクルスになりました。
夏休みの終わりごろ、出来上がった可愛いかたちのピクルスは、ナイフとフォークでメインディッシュのように大事に美味しくいただきました。
8月は夏の盛り。ハーブと虫たちとの関係を考えてみましょう。来月もハーブの庭からお話しします。
PROFILE
葉子
ハーバリスト
ハーブスクール&プロデュース ウィズハーブ 代表、NPO 法人日本ハーブ振興協会 主席研究員 、財団法人日本家庭園芸普及協会 グリーンアドバイザー、NHK 学園 ハーブ生涯学習 1 級インストラクター、H15 日本園芸協会 ハーブコーディネイター部門 最優秀成績賞受賞。ハーブ講師として、全国のセミナーや講演会においてハーブを広く普及させるための活動を行う傍ら、ハーブ研究家として各地のハーブガーデンのプロデュースや商品開発、NHKをはじめとするメディア出演、ハーブ専門誌でのコラム執筆などを手がける。