▼3月はすみれ | 第1回

ハーバリストである葉子さんの「くらしを綴る植物たち」をご紹介するコラム連載。葉子さんが暮らしと研究を行う京都のハーブガーデンから、毎月、暮らしに寄り添った季節のハーブ処方と、その楽しみ方をお届けします。


桜の便りがメディアを賑わし始めて、やっと花粉症のピークが終わりつつあることを肌身で感じるころ。

明るい日差しに誘われて、幅広の日よけがついたお気に入りの麦わら帽子を、クローゼットの奥から探し出して、私も春の訪れを身にまといます。

今日のハーブのお楽しみは?

冬の間、庭を優しく彩ってくれたスノードロップが終わり、アネモネとすみれの美しい紫が庭にその時を教えます。今日はすみれのおむすびとすみれのお吸い物を作りましょう。

すみれは、春先ののどの渇きと炎症を抑えることで有名なハーブ。その深い紫は、赤ワインやブルーベリーでも有名な、「アントシアニン」というロマンチックな彩り。炎症を抑える効果やアンチエイジングだってかなえてしまう、赤から紫の色素です。

すみれの葉には、明日葉を思わすような、滑らかな「ぬめり」があり、気管支や消化器の粘膜を潤します。クセも少なく、ぬた和えや天ぷら、フレッシュサラダやスープにと、3月のすみれは、葉子のキッチンで毎年大活躍します。


〈すみれの葉のお吸い物レシピ(2人分)〉

だし汁1.5カップ
酒小さじ1
塩少々
醤油小さじ1
下茹でしたすみれの葉10枚程度
卵豆腐 2すくい
柚子皮
だし汁と酒、塩を加え、ふつふつしたら醤油、卵豆腐、すみれの葉を入れて温める。
お椀にひと削りの柚子皮と盛り付ける。

<すみれの花のおむすびrecipe(おむすび4個)>
炊き立てのご飯 お茶碗2杯分
塩 2つまみ
萼を外したすみれの花 10輪
塩茹でしたソラマメ 5個
手水 適量
ごはんにそら豆とすみれの花、塩を和えて、おむすびを作る。


すみれの思い出

3月のすみれの思い出は、まだ幼かった娘が、カップケーキに真剣なまなざしでのせたひと匙のホイップクリームに、お砂糖まぶしにしたすみれの花を、小さな人差し指と親指でつまんで飾ったときの笑顔。

薄い水色の空、透明な日差し、バターと小麦の香りとすみれの花。そしてピンクのほっぺ。優しい時間。


PROFILE

葉子

ハーバリスト

ハーブスクール&プロデュース ウィズハーブ 代表、NPO 法人日本ハーブ振興協会 主席研究員 、財団法人日本家庭園芸普及協会 グリーンアドバイザー、NHK 学園 ハーブ生涯学習 1 級インストラクター、H15 日本園芸協会 ハーブコーディネイター部門 最優秀成績賞受賞。ハーブ講師として、全国のセミナーや講演会においてハーブを広く普及させるための活動を行う傍ら、ハーブ研究家として各地のハーブガーデンのプロデュースや商品開発、NHKをはじめとするメディア出演、ハーブ専門誌でのコラム執筆などを手がける。


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