▼自然派やオーガニックでも起こります。「海外の化粧品が肌に合わなくて…」

敏感肌向けのスキンケア化粧品を手がけ、その後さまざまなカテゴリの化粧品ブランドを開発してきたOSAJIブランドディレクターの茂田正和。国内外を問わず、オーガニックコスメに関する多くの疑問や質問をいただく機会が増えてきました。今回は、その中でも「オーガニック」や「自然派」をうたった海外の化粧品について、ありがちな誤解についてお話していきます。



――海外のオーガニック化粧品を使ったら、思ったより刺激を感じたのですが…。

海外で買ったもの、あるいは国内で買った輸入もののオーガニック化粧品というと、欧米のものがかなり多いのではないかと思います。オーガニックと書いてあるとそれだけで肌にやさしそうなイメージを持ってしまう方がまだまだ多いようですが、まず欧米と日本では風土の違い、自然環境ひとつとってもかなり差がありますよね。

人間の体は環境に適応しようとするので、人種によって望ましいスキンケアが違ってくるのが当然なんです。具体的にどんな要因で肌質に違いが出てくるのかというと、とくに際立っているのは“食生活と水質”だと思います。


――毎日食べるもの、食生活って、そんなにも肌に影響するのでしょうか?

その国で脈々と受け継がれた食習慣は、体質はじめ、肌質の傾向に影響しています。

欧米は肉食の歴史が長いので、脂っぽさや、その脂っぽさが酸化して生じる体臭のケアを、スキンケアが兼ねている部分は大いにあると思います。ボディソープでしっかり洗って、香りの強いボディローションや香水を毎日つけることは、当たり前になっているんですよね。 一方で、日本は肉食がはじまってからの歴史がまだまだ浅く、体臭も弱い傾向にあります。そのため、そこまでしっかり洗い落とす必要性も、何か香料の強いものをつける必要性もないんです。


――水質でスキンケアが変わる。というのは、どういうことなのでしょうか?

ヨーロッパなどに旅行に行った人から「水が硬水だから、石けんやシャンプーが全然泡立たなくて…」といった話を聞かされたことはないでしょうか。ヨーロッパや北米などは水道水の硬度がかなり高く、日本の水道水は一般的に硬度が低い軟水といわれています。 硬度が高いというのは、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルがたくさん含まれているということです。泡立ちの悪さは、これらの水に溶けないミネラルに、石けんやシャンプーに配合されている洗浄成分が汚れと反応する前に化学反応を起こしてしまうことによって起こります。この問題点をクリアすべく、製品にはさまざまな角度から工夫がなされていると思いますが、硬水が生活用水の国の洗顔料やボディソープの中には、“しっかり落ちた感”を与えるため、洗浄力が日本のものよりやや強くなっているものも見受けられます。


――洗顔料やボディソープ以外も、いまいち肌に合わないと感じたのですが…。

1つめの食生活の話と、2つめの水質の話を合わせてみても、欧米のスキンケアは“ごっそり洗い落とし、こってり塗って保湿する”という傾向が強いと思います。

日本と比べて、ミルクやクリームが好まれるのも、そのあらわれではないでしょうか。それらの保湿アイテムの中には、天然由来であっても、体臭ケアの役割を果たせるくらいの香料が配合されていることも。 秋冬には空気が乾燥し、春夏になると気温と湿度が急上昇する、四季というメリハリを過ごしている日本人は、ミルクやクリームの油分のべたつきが苦手で、肌トラブルに繋がってしまう方も多いです。また、香りで体臭ケアをする必要性がもともと低い上、春夏のムシムシとした環境下では、香料の強いものを使いたいという欲求は低い傾向にあります。

化粧品にとって、香りや使用感というのは確かに大切な要素です。しかし、オーガニックや自然派といえども、海外でつくられた化粧品は、予想以上に香りが強かったり、洗浄力が高かったり、ということも少なくないと思います。とくに肌の弱い方は、生まれながらの自分の肌の傾向、現在のバリア機能の状態などをよく観察した上で、国産のスキンケアを選んでいただくと、肌に合わずトラブルを招いてしまう確率がぐっと下がると思います。

※こちらは2018年5月収録、OSAJIディレクター茂田正和による皮膚科学に基づいた解説のアーカイブです。


PROFILE

茂田正和

株式会社OSAJI 代表取締役 / OSAJIブランドディレクター

音楽業界での技術職を経て、2001年より化粧品開発者の道へ進み、皮膚科学研究者であった叔父に師事。2004年より曽祖父が創業したメッキ加工メーカー日東電化工業の化粧品事業として多数の化粧品を開発、健やかで美しい肌を育むには五感からのアプローチが重要と実感。2017年、スキンケアライフスタイルを提案するブランド『OSAJI』を創立しディレクターに就任。2021年にOSAJIの新店舗としてホームフレグランス調香専門店「kako-家香-」(東京・蔵前)、2022年にはOSAJI、kako、レストラン『enso』による複合ショップ(鎌倉・小町通り)をプロデュース。2023年、日東電化工業の技術を活かした器ブランド『HEGE』と、HEGEで旬の食材や粥をサーブするレストラン『HENGEN』(東京・北上野)を手がける。著書『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)。2024年2月9日『食べる美容』(主婦と生活社)出版。


interview : Kumiko Ishizuka

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