▼8月は虫たちと暮らす | 第6回
ハーバリストである葉子さんの「くらしを綴る植物たち」をご紹介するコラム連載。葉子さんが暮らしと研究を行う京都のハーブガーデンから、毎月、暮らしに寄り添った季節のハーブ処方と、その楽しみ方をお届けします。
ルーにアゲハチョウのアオムシ、ミントの葉にはオンブバッタフェンネルにもカメムシを見つけて驚愕する夏です。
今日のハーブのお楽しみは?
目覚めと同時に「暑い」という言葉しか浮かばない日々。午前6時前に庭に出るとすでに朝日はかなり高い位置に来て、日差しが強くなりだすと同時に蝉が鳴き、蚊が飛び回ります。水・日焼け止め・虫よけは8月の庭の三種の神器です。
肌が強くない私にとって、虫よけスプレーですら肌荒れの原因になりがちです。
蚊はハーブの香りの中でもレモングラスなどのレモン様の香りの成分や、ハッカやペパーミントの持つメンソール、ラベンダーの香りが苦手。中でもお勧めはローズゼラニウムです。
蚊の嫌がる香りを総合的に保有し、園芸初心者にも育て易いハーブです。蚊が発生する夕立ち後の蒸し暑さの中、バラ様の優しい香りで蚊よけ効果を発揮します。
このローズゼラニウムとレモンゼラニウムの交配種は「蚊除草」という名前で販売されています。園芸は苦手という方は、お肌に優しいゼラニウムとミント香るの蚊よけはいかがでしょうか。
〈ローズゼラニウムの蚊よけスプレー〉
50ml以上のスプレー容器 1本分
・精製水 40ml
・ウォッカ 10ml
・ローズゼラニウム精油 3滴
・ペパーミント精油 2滴
作り方
1.ボトルにウォッカを注ぎ、精油を滴下する
2.一旦蓋を閉め、白濁するまで振り混ぜる
3.②に精製水を加え、よく振り混ぜる
冷暗所での保存期間 2週間
アルコールはグリセリンで代用可能
必ずパッチテストをしてからご使用ください
小さなお子様は、保護者の監視下で使用してください
精油はお薬ではありません
ハーブを食べる虫たち
栄養価が高いハーブを、虫たちもよく知っています。
夏は特にカメムシやアオムシのご相談を受けます。彼らの天敵は小鳥。くちばしが近づくとぽとりと地面に落ちて、忍者のごとく隠れるというワザを会得しているんです。
なので、ハーブの下に紙袋を設置し、遠くから箒でつつき落下させて捕獲します。カメムシは強烈に匂うので、袋ごと生ごみとして処分しましょう。
ハーブをはじめ植物も多様性が担保されることで、病気や害虫の蔓延を防ぐことが可能です。
野原を思い浮かべてください。肥料や農薬を使わずとも、毎年草花たちは逞しく成長し、多様性と生態系を維持しています。
環境にあった多くの種を庭に招き入れ、生きる力を活用できる園芸を楽しんでください。
ラベンダーの魔法の想い出
娘が小さい頃、ラベンダーでお手製のかゆみ止め(蚊専用)をラベンダーで毎年作っていました。
材料は6月に収穫したラベンダーの花穂3本と、大さじ3杯の粗塩に少しのお水。娘が真剣な顔ですり棒を握り、私はすり鉢を支えます。「ごりごり…」と二人で声を合わせてすりつぶすと、粗塩が少しずつラベンダー色に染まり香り立ちます。
魔法の呪文は「痒くても掻く前に!」ひとすくいのラベンダーソルトの魔法で、蚊に刺されてもすぐにかゆみが落ち着き、腫れが引きます。ぜひお試しくださいね。
9月は残暑の季節。夏バテに役立つハーブについて考えてみましょう。来月もハーブの庭からお話しします。
PROFILE
葉子
ハーバリスト
ハーブスクール&プロデュース ウィズハーブ 代表、NPO 法人日本ハーブ振興協会 主席研究員 、財団法人日本家庭園芸普及協会 グリーンアドバイザー、NHK 学園 ハーブ生涯学習 1 級インストラクター、H15 日本園芸協会 ハーブコーディネイター部門 最優秀成績賞受賞。ハーブ講師として、全国のセミナーや講演会においてハーブを広く普及させるための活動を行う傍ら、ハーブ研究家として各地のハーブガーデンのプロデュースや商品開発、NHKをはじめとするメディア出演、ハーブ専門誌でのコラム執筆などを手がける。