▼9月はルートハーブで残暑を楽しむ | 第7回
ハーバリストである葉子さんの「くらしを綴る植物たち」をご紹介するコラム連載。葉子さんが暮らしと研究を行う京都のハーブガーデンから、毎月、暮らしに寄り添った季節のハーブ処方と、その楽しみ方をお届けします。
残暑とは言えないほどの厳しい暑さに、朝から空を見上げる9月になりました。
今日のハーブのお楽しみは?
今年は特に暑さが厳しい夏でした。私は海で遊覧船からウミネコに餌やり体験をしたり、山で滝を見つめて、清流のせせらぎを体感しました。
とはいえ、かき氷を口にしながらも、クーラーの涼しさに頼る日々。するとやってくるのが、おきまりの夏バテ。
朝起きると、昨日のだるさと何とも言えないクーラーの冷えが膝下から足先までを包んでいる…そんななんともいえない違和感。
食欲がないわけではないけれど、つい冷たい食べものに手を出してしまい、今度は温かいものを、となります。この繰り返しで、睡眠の質は落ち、胃腸が弱り、気づくと自律神経の乱れからやる気を失っている自分に気づきます。
〈夏におすすめのクラフトジンジャエール〉
生姜50g(大きめのひとかたまり)
黒胡椒小さじ1(ホールタイプ)
クローブ5粒 スターアニス1個 レモン 皮ごと1/2個 蜂蜜 100~150ml 密閉瓶 180~200ml容量のもの
炭酸水適量 粗びき黒胡椒少々 スライスレモン1切れ
作り方(ジンジャーベース)
1 密閉瓶は、煮沸消毒しそのまま乾燥させる
2 生姜とレモン1/2個は、皮ごと薄くスライス
3 蜂蜜は50度の湯煎にかけておく
4 ビンに、②の生姜とレモン、ホールの黒胡椒、クローブ、スターアニスを入れ、材料が完全に浸る程度にゆっくり蜂蜜を注ぐ。
5 ひと晩~1日冷暗所で休ませて出来上がり。
※翌日からは冷蔵庫に入れても固まりません
※保存期間は冷蔵庫で3ヶ月
召し上がり方
ジンジャエール:グラスに大さじ2杯~3杯のベースを入れ、氷とレモンスライス、粗引きコショウをお好みで振りかけて、炭酸水を注いてお召し上がりください。
ホットレモンジンジャー:マグカップにベースを大さじ1と熱湯を注ぎます。
ハーブを食べる虫たち
栄養価が高いハーブを、虫たちもよく知っています。
夏は特にカメムシやアオムシのご相談を受けます。彼らの天敵は小鳥。くちばしが近づくとぽとりと地面に落ちて、忍者のごとく隠れるというワザを会得しているんです。
なので、ハーブの下に紙袋を設置し、遠くから箒でつつき落下させて捕獲します。カメムシは強烈に匂うので、袋ごと生ごみとして処分しましょう。
ハーブをはじめ植物も多様性が担保されることで、病気や害虫の蔓延を防ぐことが可能です。
野原を思い浮かべてください。肥料や農薬を使わずとも、毎年草花たちは逞しく成長し、多様性と生態系を維持しています。
環境にあった多くの種を庭に招き入れ、生きる力を活用できる園芸を楽しんでください。
ラベンダーの魔法の想い出
娘が小さい頃、ラベンダーでお手製のかゆみ止め(蚊専用)をラベンダーで毎年作っていました。
材料は6月に収穫したラベンダーの花穂3本と、大さじ3杯の粗塩に少しのお水。娘が真剣な顔ですり棒を握り、私はすり鉢を支えます。「ごりごり…」と二人で声を合わせてすりつぶすと、粗塩が少しずつラベンダー色に染まり香り立ちます。
魔法の呪文は「痒くても掻く前に!」ひとすくいのラベンダーソルトの魔法で、蚊に刺されてもすぐにかゆみが落ち着き、腫れが引きます。ぜひお試しくださいね。
9月は残暑の季節。夏バテに役立つハーブについて考えてみましょう。来月もハーブの庭からお話しします。
PROFILE
葉子
ハーバリスト
ハーブスクール&プロデュース ウィズハーブ 代表、NPO 法人日本ハーブ振興協会 主席研究員 、財団法人日本家庭園芸普及協会 グリーンアドバイザー、NHK 学園 ハーブ生涯学習 1 級インストラクター、H15 日本園芸協会 ハーブコーディネイター部門 最優秀成績賞受賞。ハーブ講師として、全国のセミナーや講演会においてハーブを広く普及させるための活動を行う傍ら、ハーブ研究家として各地のハーブガーデンのプロデュースや商品開発、NHKをはじめとするメディア出演、ハーブ専門誌でのコラム執筆などを手がける。