▼10月はメランコリック | 第8回
ハーバリストである葉子さんの「くらしを綴る植物たち」をご紹介するコラム連載。葉子さんが暮らしと研究を行う京都のハーブガーデンから、毎月、暮らしに寄り添った季節のハーブ処方と、その楽しみ方をお届けします。
日差しも落ち着いて、秋の庭仕事が本格的になってきました。
ラベンダーとレモングラスを剪定し、お料理はバジルの香りからセージの香りに。
今日のハーブのお楽しみは?
9月27日の秋分の日を境に、11月の初旬までは「秋の夜長」この季節ならではの時間の上手な使い方を楽しみたいですね。
でも夜が長いということは、心が不安定になりやすいこととイコール。
よく「一晩寝たら気分が変わる」と言いますね。これはバイオリズムと人間の心理の関係を上手く表しています。
人は長い歴史の中で夜の「暗闇」を「危険」と意味づけてきました。闇の中には危険が潜んでいるのです。そして現代。夜の暗闇の中で眠らない私たちは、ストレスを増大させてしまうのです。
夕方にはもう暗くなる秋であっても、現代の私たちは時計に支配され生活しています。“暗闇の危険回避”のために必要以上の集中力が要求され、神経伝達物質のアドレナリンやノルアドレナリンに支配されます。
これらは適切に働くと学習能力の向上、集中力アップを促します。しかし過剰になると感情のコントロールを失い、緊張状態を心と体に強います。つまり自律神経に大きな影響力があるのです。
眠れず、ストレス状態が増幅され、結果セロトニンが分泌されます。セロトニンを幸せホルモンと誤解する傾向がありますが、過剰な緊張状態が続くと、セロトニンは発痛物質となって片頭痛や生理痛などの痛みを体に与え、強制的に休息をとるよう促します。そしてまたストレスを感じる悪循環が出来上がります。
そんな時は、秋らしい心落ち着くハーブの香りを上手に活かす方法がおすすめです。
〈ホップと柿の葉のサシェ〉
材料
マスキングテープ 適量
だしパック 1枚
輪ゴム 1本
乾燥させた柿の葉 3枚
ドライホップ 大さじ1
作り方
1 柿の葉は軽くもんで粗くつぶしておく
2 だしパックに①とホップを入れ、マスキングテープでしっかりと密封する
3 眠る前に枕元や枕の下に挟み込む
柿の葉は、穏やかな甘い香りと心を落ち着かせるクマリンの働きや、疲れをとるフィトンチッド効果が期待できます。
ハーブティーとして利用も可能で緑茶の30倍に及ぶVCはもちろん、カルシウム、カリウム、鉄、亜鉛とバランスよくミネラルを含みます。
そしてビールで有名なホップの芳香はクマリン、リラックス効果の高いバラやラベンダーに含まれるゲラニオールやネロール、リナロールで構成されています。
秋の夜長に知らず知らずため込んでしまったストレスは、ひと晩寝て朝考えよう!そんな日常をこのサシェで手に入れましょう。
10月の想い出
我が家の庭には、大きな柿の木がありました。ある日どこからかやってきた山鳩が巣をつくって住み始めたのです。
私はハトの糞や、雛が生まれたらどうしようと頭を抱えていたのですが、中学生の娘は毎朝山鳩に話しかけ、食パンの耳をそっと木の枝に刺していました。しばらくすると、雛は孵ることなく山鳩もいなくなってしまいました。
その年の10月は例年よりたくさんの柿が実り、娘と実を取っていると、山鳩の巣と恐らく烏に荒らされて割れた卵の殻を見つけました。
夕焼けが綺麗な土曜日の午後、殻を木の根元に埋めて「ごめんね」と手を合わせていた娘の姿を思い出します。
11月には秋本番。ゆったりとした時間を楽しむ温かなハーブティーが恋しい季節です。
夏の間に収穫して乾燥させた、ドライハーブを上手に保管して、美味しく香り豊かなドライハーブを楽しみましょう。
PROFILE
葉子
ハーバリスト
ハーブスクール&プロデュース ウィズハーブ 代表、NPO 法人日本ハーブ振興協会 主席研究員 、財団法人日本家庭園芸普及協会 グリーンアドバイザー、NHK 学園 ハーブ生涯学習 1 級インストラクター、H15 日本園芸協会 ハーブコーディネイター部門 最優秀成績賞受賞。ハーブ講師として、全国のセミナーや講演会においてハーブを広く普及させるための活動を行う傍ら、ハーブ研究家として各地のハーブガーデンのプロデュースや商品開発、NHKをはじめとするメディア出演、ハーブ専門誌でのコラム執筆などを手がける。