くらしを綴る植物たち 「11月は秋の終わり」|第9回

ハーバリストである葉子さんの「くらしを綴る植物たち」をご紹介するコラム連載。

葉子さんが暮らしと研究を行う京都のハーブガーデンから、毎月、暮らしに寄り添った季節のハーブ処方と、その楽しみ方をお届けします。


ケトルから溢れる蒸気の行方を楽しみながら、体を温めるためのドライハーブを準備する季節が来ました。晩秋の高い空を曇りガラスから見上げると、ちょっとだけ夏が恋しくなります。

今月のハーブのお楽しみは?

戸棚からドライハーブが入ったジャーを取り出し、ティーポットにひと匙ふた匙。カモマイルレディースマントルのブレンドを選びました。私のお気に入りです。

<カモマイルとレディースマントルのティー>

材料
カモマイルジャーマン 小さじ1.5
レディースマントル 小さじ1
マーシュマロウルート 小さじ1
セージ 小さじ1
ヤロウ 小さじ1
メドウスィート 小さじ0.5

作り方
1 熱湯300㎖(沸騰したてのお湯)をブレンドしたハーブに注ぐ
2 すぐに蓋をして5~6分蒸らす
3 香りを楽しみながらカップに注ぐ


カモマイルの甘味は心を緩め、聖母マリアのハーブのひとつレディースマントルは様々な女性の痛みや不快感をやわらげ、マーシュマロウの根は、とろりとした喉越しで、喉とお腹を温めます。

そして、セージヤロウ、メドウスィートは、私が感じている体のアンバランスを調整してくれます。

私は、体が冷え切るとすぐ膀胱炎や口内炎、扁桃腺炎といった炎症を起こしがちです。気づいた時に、まずこのお茶で体を温め緩めています。とろりとしたテクスチャーとほのかに甘い風味が忙しく過ぎていく毎日を少しだけスローダウンしてくれるかのようです。

 「ハーブティーは、体にいいのでしょうか?」 

そのご質問は常に寄せられるものです。もちろんです!過酷な環境で生き抜く植物たちの逞しい生命力は、誰もが理解するところです。

強すぎる日差し、環境ホルモン、降り積もる雪、豪雨…。植物はいつどんな時にでも芽吹き成長し、その土地を浄化し命を繋ぎ続けます。

その底力を1杯のティーで私たちは受け取ることができるのです。劇的なものではないのかもしれません。それがいいのです。

=常に心と体のサインに目を配り、バランスを整える=

この教えは古代アラブ医学や古代エジプト医学から、最も効果的な健康管理法として受け継がれてきました。

コロナ以降、人の持つ免疫システムに注目が集まっています。その根幹はホメオスタシスであることは、すでに明らかです。人が常に一定であろうとする調整能力です。私たちの心も体も安定を求めているのです。

安定は矯正では手に入れられません。日々の小さな調整の繰り返しが、安定と恒常性を培い、体に宿る免疫力を最大限に生かすことができるのではないでしょうか。それは体だけではできないこと。心も一緒にケアする必要があります。

さあ、お気づきですね。ハーブティーはあなたの心と体を元気づけるとても良いアイテムです。

11月の想い出

冬の足音が近づくころ、風邪気味の娘に蜂蜜入りのセージのお茶を入れました。すっきりした香りに目を見開きながら、娘は無意識でじっくり蒸気を吸い込んで、「お鼻がすぅーってする!」と笑顔になりました。

何ひとつ教えていないのに、香りを上手に感じて、素直に反応する娘の様子に、心配していた心がほどける思いがしました。娘は私の手を取って「すごく温かいよ」と飲み干したティーカップを持たせてくれました。

その夜は鼻詰まりがすっかり落ち着いて、スースーと静かな寝息を立てていたかわいい姿を思い出します。

もう来月は師走ですね。ちょっと腰が引けてしまう年末のお掃除も、ハーブの香りを上手に生かして、楽しく済ませてしまいましょう。来月もハーブの庭からお話しします。


葉子 Youko ハーバリスト

ハーブスクール&プロデュース ウィズハーブ 代表、NPO 法人日本ハーブ振興協会 主席研究員 、財団法人日本家庭園芸普及協会 グリーンアドバイザー、NHK 学園 ハーブ生涯学習 1 級インストラクター、H15 日本園芸協会 ハーブコーディネイター部門 最優秀成績賞受賞

ハーブ講師として、全国のセミナーや講演会においてハーブを広く普及させるための活動を行う傍ら、ハーブ研究家として各地のハーブガーデンのプロデュースや商品開発、NHKをはじめとするメディア出演、ハーブ専門誌でのコラム執筆などを手がける。



Instagram: @youko_with_herb