▼12月は冬支度 | 第10回
ハーバリストである葉子さんの「くらしを綴る植物たち」をご紹介するコラム連載。葉子さんが暮らしと研究を行う京都のハーブガーデンから、毎月、暮らしに寄り添った季節のハーブ処方と、その楽しみ方をお届けします。
並木道の木々の葉はすでに風に舞い、街はすっかり冬支度です。ローズマリーが空色の花をつけ、菫のつぼみがちらほら見える以外は、セージの葉ですらうなだれたように、冬の庭で揺れています。
今月のハーブのお楽しみは?
時間に追われる12月。お夕食の片づけを終えたあと、温かいチャイを楽しむひと時が大好きです。
娘が小さかったころ、缶なのに「チャイの箱」と名付けた赤い缶から、クローブやセイロンシナモンを取り出し、片手鍋でお気に入りのディンブラの茶葉と一緒にミルクたっぷりのスパイスチャイをよく作りました。
〈チャイの箱のチャイティー(1杯分)〉
お気に入りの紅茶 1杯分
牛乳 100㎖
水 100㎖
クローブ 1本
セイロンシナモン 1本半
アニスシード 小さじ1/4
スライスジンジャー 1枚
スターアニス 1個
-作り方-
①シナモンは細かく裂いておく。アニスシードはすり鉢で丁寧にすり潰す
②ミルクパンに水とスパイス全量を入れ、弱めの中火で沸騰直前まで煮出す
③ふつふつしたら火を止め、紅茶を加えて軽く混ぜてから蓋をし、紅茶に必要な時間蒸らす
④蒸らし終わったら、牛乳を加えてもう一度中火で温める(沸騰させないように気を付ける)
お気に入りのマグカップに、茶こしを使って注いで召し上がれ
仕上げに、シナモンパウダーを一振りしたり、はちみつを加えたり、お好みでアレンジしてください
チャイティーをいただきながら、衣類の防虫サシェを作るのもこの季節のお楽しみです。
〈衣類の防虫サシェ(10個分)〉
不織布ティーバッグ 10枚
マスキングテープ(必要な長さ)
クローブ 5g
ベイリーフ 5g(荒くちぎっておく)
タイム 5g
ペパーミント 5g
-作り方-
スパイスとドライハーブを10等分して、ティーバッグに詰め、マスキングテープでしっかり封をする
-使い方-
小引き出しなら1個、衣装ケースなら2個が必要数です。香りが拡散するよう衣装ケースの蓋の下には空間を残して衣類を詰め、一番上にサシェをのせます。
ハンガーにかける場合は、ホチキスで輪ゴムを止めるとよいでしょう。
-交換時期-
クローブは1年に1度、その他のスパイスやハーブは半年に一度の衣替えの時に入れなおします。
衣類の虫は、主に小さな蛾と甲虫の仲間です。成虫は衣類の繊維がまとまった場所や、布などに卵を産んで飛び去ってしまいます。その羽化した幼虫が「衣類の害虫」です。
クローブやベイリーフに含まれる「オイゲノール」という香りの成分は、蛾の仲間やゴキブリ、甲虫の仲間が嫌がる香りです。しかも殺菌作用や抗ウイルス作用があることでも知られています。
衣類の虫の成虫は敏感にオイゲノールをかぎ分け、近づいてこないため、産卵されることが減り、使えば使うほど衣類の虫の被害が減ってくれるというわけです。
また、衣替えしたての衣類のニオイの原因は、洗いきれなかった皮脂の酸化臭とカビ臭です。タイムの主要成分「チモール」は抗酸化作用が強く、防カビ効果でも知られる成分。そこにさわやかなペパーミントの香りが加わることで男女問わず好まれる、優しい香りの防虫サシェの出来上がりです。
菫の季節から、皆さんとお話してきたこのコラムですが、いったん12月で区切りとなります。
コラムで懐かしい日々の思い出も綴ってきましたが、その中で登場する娘が今年結婚いたしました。
娘からウエディングブーケを作ってね、とお願いされた時は夢のようでした。真っ白なウェディングドレスを着た娘が、ハーブのブーケを手に幸せいっぱいの笑顔でこの日を迎えてくれたことが、今年一番の幸せな思い出になりました。
では、またいつの日かハーブの庭からお話しできますように。ありがとうございました。
PROFILE
葉子
ハーバリスト
ハーブスクール&プロデュース ウィズハーブ 代表、NPO 法人日本ハーブ振興協会 主席研究員 、財団法人日本家庭園芸普及協会 グリーンアドバイザー、NHK 学園 ハーブ生涯学習 1 級インストラクター、H15 日本園芸協会 ハーブコーディネイター部門 最優秀成績賞受賞。ハーブ講師として、全国のセミナーや講演会においてハーブを広く普及させるための活動を行う傍ら、ハーブ研究家として各地のハーブガーデンのプロデュースや商品開発、NHKをはじめとするメディア出演、ハーブ専門誌でのコラム執筆などを手がける。