株式会社まるおか 会長 丸岡 守さん、代表取締役社長 丸岡史明さん×OSAJI 代表 茂田正和|SPECIAL CROSS TALK

株式会社まるおか 会長 丸岡 守さん、代表取締役社長 丸岡史明さん
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株式会社OSAJI 代表 茂田正和

安くて便利な食べものよりも、適正価格と安全なおいしさを追求する〈スーパーまるおか〉。チラシや広告がない代わりに、店内には「食は命」「食の価値はおいしさ」「自分の舌と頭で判断」といった手書きの格言が至るところにあります。本当においしいものとは何か。心ある商売とはどんなものか。〈株式会社まるおか〉会長の丸岡 守さんと社長の丸岡史明さんにお話をうかがいました。


▶︎スーパーまるおか…

「安全で本当においしいものだけを食卓に」をテーマに、全国から厳選した青果や鮮魚、食肉、調味料や加工品のほか、手づくりの惣菜や弁当などこだわりの商品を取り揃える群馬県高崎市のスーパーマーケット。独自の経営が社会的にも高く評価され、1998年には優良経営食料品小売店として農林水産大臣賞を受賞。
https://www.e-maruoka.jp/

「食べられない」という実体験から
食の大切さや豊かさを考えるように 

茂田正和(以下、茂田) 僕は生まれも育ちも高崎で、まるおかさんには両親の代から通わせていただいています。母も料理はしますが、うちは「男子厨房に入る」家でもあったので、夕飯の買い出しっていうと父が必ず行っていました。

丸岡 守会長(以下、守会長) そうですか。ありがとうございます。

茂田 今回は、まるおかさんの食に対するこだわりを中心にお話をうかがいたいと思っています。まずは創業の経緯からお聞かせいただけますか。

守会長 もともとは父が箕郷町に構えた八百屋が始まりで、20坪ほどの店舗に野菜と食料品がちょっとだけ置いてあるぐらいだったようです。私はスーパーマーケットをやりたかったので、その後に何度か場所を移したり広げたりしながら、9年前ぐらいに今の形になりました。

茂田 すぐ隣にはショッピングモールがありますが、大手スーパーで売っているものって安さを追求したものが多いじゃないですか。そんななかでおいしさや安全性を追求するようになったきっかけは何だったのでしょうか?

株式会社まるおか 会長 丸岡 守さん

守会長 30代のころに私自身が胃潰瘍で手術をしたことがあって、その経験も大きいですね。胃の3分の2ぐらいを取っちゃいましたから、最初の1週間ぐらいはじゅうぶんに食事をとることもできませんでした。そのときに食べられないってことがどういうことなのかを実感しました。健康な体で食べたいものを食べられるって素晴らしいこと。そこではっきりと自分のなかで食に対する意識が変わったんです。おいしくて安全なもの、自分が食べたいと思うものを売りたいと。

茂田 そのような経験があったのですね。安全かつおいしいものを探すのって、そう簡単ではないように思います。生産者さんや作り手の方、取引先さんとのつながりはどのようにしてできていくんでしょう?

株式会社まるおか 代表取締役社長 丸岡史明さん

丸岡史明社長(以下、史明社長) 残留農薬や発がん性のある物質の有無を検査する野菜問屋さんがいらっしゃるんですけど、きちんと野菜を作っている生産者さんとのつながりもあるので、そういう方から紹介していただくこともあります。

守会長 信頼関係ができていれば、オーガニック認証を取得していなくても農薬を使っていない生産者さんの野菜は仕入れています。現状の認証制度はすごくお金がかかるんですけど、農家さんが全部負担しなきゃいけないんです。政府がもっと援助したほうがいいんですよ。

株式会社OSAJI 代表 茂田正和

茂田 取引先さんとの信頼関係のもと、きちんと作っているかどうかで判断されていると。まるおかさんには県内外からもたくさんのお客さんがいらっしゃいますが、来店のきっかけというのはどういったものが多いんですか?

史明社長 以前は口コミが大半でしたけど、今はメディアやSNSの存在も大きいですね。最近ではテレビでご紹介いただくことも多いのですが、いろんな方に広く知っていただくのも大事かなと思っています。

守会長 店内には「テレビコマーシャルにだまされるな」って紙に書いて貼ってありますけど、それはまた別ですから(笑)。

茂田 そうですよね(笑)。でも僕、まるおかさんのテレビやメディア取材を積極的に受ける姿勢にはすごく共感します。自分たちのフィルターを通したいいものだけを扱ういいお店だからこそ、世の中に広く知られてどんどん浸透していくべきだなって思うんです。

守会長 先日、わざわざ渋谷からきてくれたお客さんがいたんです。東京だったらいろんなお店がいっぱいあるじゃないですかっていったら、「こんなスーパー他にないですよ」っていうんですね。料理好きの人たちからはよく、食のディズニーランドだなんていわれますよ。

茂田 本当ですよ。何時間でもいられますもん。ちゃんとした食べものを知りたいって思ったときにこういうお店があるのはありがたいことだし、自分が生まれ育った場所にあるっていうのもすごく幸せなことだなあと思います。

「社長すいせんの品」シールとは?
実印を捺すように、という商いの心得

茂田 一部の商品に貼ってある「社長すいせんの品」シールっていうのはどんな基準があるんですか?

守会長 純粋に食べておいしいかどうかですね。たとえばこの「紅くるり」は普通の大根の何倍もミネラルが豊富なんです。中が赤いので大根おろしにするとピンク色になってきれいですよ。どこにでも売っているわけじゃないので、おいしさと安全性の基準はもちろん希少価値もポイントです。

茂田 このシールがあると、特に調味料を選ぶときに助かっています。瓶の外側やパッケージの情報だけで選んだり見極めたりするのって難しいんです。成分表示を見ても、実際のところどこまでちゃんと作られているんだろう?って感じるものも多いので。だったら自分で全部試食して選べばいいっていわれるかもしれないけど、なかなかそうはいかないですよね。

史明社長 だからこそ取り扱う商品は必ず試食をして、きちんと判断したうえでお客さんに提供することを大切にしています。会長は生産者さんのところに直接行って話を聞いて、その場で食べてみてっていうことをずっとやってきていて、今ではシールの数もだいぶ増えました。

茂田 やはりそこがスーパーまるおかに対する絶対的な信頼と安心感ですよね。以前、リッツ・カールトン元日本支社長の高野登さんが「ブランドとは企業とお客さんが信頼で結ばれた年数のことであり、そうやって続けることでしか生まれないものだ」とおっしゃっていて、まるおかさんというブランドにも通じるところがあると感じています。

守会長 なるほど、ひじょうにわかりやすいお話ですね。「社長すいせんの品」シールに関していうと、戦前から戦後にかけて活躍した経営思想家、岡田徹さんの詩集に「実印を捺す」という詩があるんですね。商売の心得を書いたものです。このシールはまさに私が一つひとつ実印を捺すようにして選んだものに貼っています。

茂田 もうひとつ素晴らしいと思うのは、価格設定です。まるおかさんは一般的なスーパーに比べたらやや高いけれど、いわゆる高級スーパーかというとそうじゃない。お客さんとお店との間に存在している価格への信頼と納得感があるからこそ成り立っている印象があります。

守会長 いいものだからといって、シールを貼ったからといってすぐ売れるわけでもないですからね。なぜおいしいのかをちゃんと説明しながらコツコツ伝え続けていくうちに、お客さんが少しずつ増えていったんです。

史明社長 つまりは適正価格になっているかどうか。肝心なのはその基準をどのように設定するかなんです。

茂田 生産者さんの持続性という意味でも、需要があるものを売り続けることや、安いものを買い続けることで結果的に社会や文化がどうなってしまうのかを想像することも必要ですね。

手間ひまを惜しまないことで差別化
効率主義ではないスーパーを目指す

茂田 会長の食に対するこだわりを近くでずっと見てこられてきて、社長はどのように感じられていたんですか。

史明社長 正直なところ、高校ぐらいまでは家業と向き合えなかったですね。店が今のような形になっていき、自分でもそういったものを食べるようになってから徐々に見方が変わっていったんです。

茂田 なるほど。家業と向き合えるようになってからは、お店を継ごうと考えていたんですか?

史明社長 そうですね。スーパーの修業に出てからは2年ぐらいで戻るつもりだったんですけど、途中で料理をやってみたくなったので、調理学校に行ってから戻ってきました。うちは惣菜にも力を入れていて、料理ジャンルごとに専門の料理人がいるんですけど、現場で意見交換するときに調理の基本を学んだことは役立っていますね。

茂田 総菜やお弁当を目当てにいらっしゃるお客さんも多いみたいですね。手間をかけて作られていると思うのですが、具体的にはどんなことがあるのでしょうか。

史明社長 一般的なスーパーの惣菜というと、あらかじめスライスしてあるものを使ったり、機械を使っているものが多いと思います。当店の場合、すべて扱っている食材を使い、手切りで調味料も1から合わせて、それらを料理人が調理して最後のパック詰めまで行っています。下ごしらえから料理人が味を見て調理するまで一貫して行っているところは珍しいんじゃないかと思います。

茂田 すごい。そこまでこだわってるんですね。

守会長 世の中の多くのスーパーは効率主義です。うちの店は安いものよりもおいしいもの。早くたくさん作るよりもいいものを手間ひまかけて作る。他ではやらないようなことをやっているから、お客さんからの支持があると思うんですよね。

食べものを「舌」で選ぶということ
情報だけでは得られない感覚も大切

守会長 みなさんに、食べものは「舌」で選んでくださいっていうんです。要するに、値段や賞味期限といった情報を「目」で選んでいる人が圧倒的に多い。たとえば納豆でも300円よりは100円の安いほうを選ぶ。それが300円の納豆を食べてみて、ああこれおいしいなっていうのがわかってくると、他のものは食べられないっていうんですよ。そういうことなんです。食べてみてわかることっていっぱいありますから。音楽だってそうでしょう。ちゃんと耳で聴かないとわからないですから。

史明社長 まずは食べておいしいものっていうのが一番なんです。おいしくないけど体に良いからっていわれても食べたいと思えないし、続けられないですよね。

茂田 たしかにそうです。化粧品も同じで、肌に良いからといっても使い心地が良くなかったら使い続けられませんから。まるおかさんでは、自分たちが試食しておいしいと思ったもの、売りたいものだけを売っています。当たり前のように聞こえるけれど、なかなかできないことですよ。

守会長 やっていることは当たり前なんですけどね。食べものってなんだ?っていうことを考える必要があると思います。食べたものが血液になり、自分の体をつくるんです。自分の体を大事にするということは、食べものをちゃんと選ぶということ。病気になったら薬で治せばいいって考える人が多いですけど、良いものを食べて免疫力を高めれば病気にもなりにくいですから。野生動物なんかを見ていてもそうじゃないですか。

茂田 現代人はその感覚がどんどん鈍ってきてしまっているような気がします。自分の体が本能的に何を必要としているかっていう感覚は僕もすごく大事だと思っていて、それは肌も一緒です。それに「ちゃんとした食べもの」っていうのは、味覚が正しければきっとわかるはず。

守会長 そうですね。ただ、そこで大きな影響を与えているのがコマーシャルです。正しい情報をちゃんと伝えないから自分で判断できなくなって、人はそれを正しいと信じてみたいと思うようになる。だからうちは広告やチラシを一切やらないんです。

茂田 食にしても美容にしても、世の中に情報がこれだけ溢れているからこそ、プロである立場の人間が情報を整理して読み解いて、さらには翻訳してお客さんに伝えるっていうのが正しい仕事なのだろうなと。人に情報をたくさん伝えることよりも、人を大切に思うってどういうことか?っていう部分を考えることのほうが大切な気がしますよね。

〈PROFILE〉

丸岡 守
株式会社まるおか 会長

1944年、群馬県高崎市生まれ。 大学卒業後、家業を継ぐ。1968年、厳選された食材のみを全国各地から取り揃えるスーパーマーケット「まるおか」を創業。1998年に優良経営食料品小売店として最高賞となる「農林水産大臣賞」を受賞。2015年、現在の場所に木造の新店舗をオープン。2018年には『おいしいものだけを売る―奇跡のスーパー「まるおか」の流儀』を出版。2023年9月、長男・史明氏が新社長就任と同時に会長に就任。

丸岡史明
株式会社まるおか 代表取締役社長

1975年、群馬県高崎市生まれ。大学卒業後、京都にある個人経営のスーパーマーケットで修業を積んだのち、調理学校にて調理の基本を学ぶ。2003年、株式会社まるおか入社。
「スーパーまるおか」では、食品部門を経て店長を務める。2023年9月、代表取締役社長に就任。野菜ソムリエの資格を持つ。Tokyo International Extra Virgin Olive Oil Competition JOOTA AWARDS 2023審査員。料理王国百選審査員。

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茂田正和
株式会社OSAJI 代表取締役

音楽業界での技術職を経て、2001年より化粧品開発者の道へ進み、皮膚科学研究者であった叔父に師事。2004年より曽祖父が創業したメッキ加工メーカー日東電化工業の化粧品事業として多数の化粧品を開発、健やかで美しい肌を育むには五感からのアプローチが重要と実感。2017年、スキンケアライフスタイルを提案するブランド『OSAJI』を創立しディレクターに就任。2021年にOSAJIの新店舗としてホームフレグランス調香専門店「kako-家香-」(東京・蔵前)、2022年にはOSAJI、kako、レストラン『enso』による複合ショップ(鎌倉・小町通り)をプロデュース。2023年、日東電化工業の技術を活かした器ブランド『HEGE』と、HEGEで旬の食材や粥をサーブするレストラン『HENGEN』(東京・北上野)を手がける。著書『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)。2024年2月9日『食べる美容』(主婦と生活社)出版。

〈スーパーまるおか〉

住所:群馬県高崎市棟高町1174-1
営業時間:11:00 ~ 20:00
定休日:日曜(臨時営業有)
https://www.e-maruoka.jp/

Edit&Text:Haruka Inoue