▼乾燥すると肌がチクチクしたり、かゆみを感じるのはなぜ?
空気の乾燥を感じるようになると、とくにアトピー素因を持たない普通肌の方であっても、チクチク感やムズムズ感といったかゆみを感じることが増えてきます。こういった“掻痒感(そうようかん)”と呼ばれるチクチク感やムズムズ感は、刺激、肌、神経が関係することで起こります。まずはかゆみが発生するメカニズムを知って、スキンケアでかゆみのスイッチとなる刺激からガードすることがポイントです。
刺激を感知する神経が伸びてくるからかゆくなる。
乾燥によって肌がカサついてくると、例えばタートルネックのニットを着た時の首元や、インナーウェアのタグが当たった部分など、ちょっとした摩擦でもかゆみが起こりやすくなります。重ね着を楽しむ季節を快適に乗り越えるには、早めにかゆみを抑えてあげると、大きなトラブルへ悪化を防げます。
空気の乾燥、すなわち湿度が低下しはじめると、細胞と細胞の隙間からうるおいが蒸発しやすくなって角質層のバリア機能が低下します。そしてバリア機能が低下すると、肌の下では刺激をキャッチする神経が触手のように伸びてきます。チクチク感やムズムズ感といったかゆみの感覚は、異物がバリア機能か刺入しようとしている状況を神経が捉えて「その部分に異常が起きていますよ」という警告として生じているのです。
かゆみを伝える神経は、ヒスタミンという物質を介して脳へ「かゆい」という感覚を知らせます。ここでスキンケアによって手を打たないとかゆみが助長され、掻き壊してしまった部分はさらにバリア機能が壊れて炎症が発生、ダメージの連鎖に陥ってしまいます。
かゆみを止めて刺激を防ぐには、しっかり保湿が必要不可欠。
神経は、体のどこかに異常があることを速やかに伝達するために働いており、とくに人体の7割を占める水分量が下がりそうな事態には敏感に反応します。そのため、かゆみを止めるために行うべきスキンケアは、体内の水分保持をサポートするためのしっかり保湿です。
おじいちゃんおばあちゃんや、春夏はとくに肌トラブルがないお子さんなど、日頃から化粧品で保湿する習慣があまりないと、この時期は腕やすねがかゆくなり、気づけば掻き壊していたというケースはよくあります。また、言葉で不快感を伝えることができない赤ちゃんは、かゆみも含めてさまざまな不快感を泣くというかたちで伝えるしかありません。近年では、肌のチクチク感やムズムズ感などのかゆみが、赤ちゃんの夜泣きの原因の1つになっているのでは、という見立てから、体全体に保湿クリームを塗って寝かせたところ夜泣きが静まったという報告もあります。
これらのことからいえるのは、トラブルが起こってからではなく、日頃から未病・予防という観点で全身の保湿ケアをしたほうが得策ということ。かゆみを感知する神経が伸びてくるプロセスが起こらなければ、掻き壊しによるトラブルを未然に防ぐことができ、秋冬も快適に過ごせます。
水分を補って油分で保つ。理想の保湿が叶うアイテムとは?
保湿ケアのアイテムとして「冬のカサカサにはワセリンやオイル、バームなどが良さそう」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、油分だけでは今ひとつです。というのも、かゆみの神経は角質層の水分量によって、伸びたり縮んだりしているため、オイルで油分を足すだけではかゆみは治まらないのです。本当の意味での保湿とは、水分を与えるヒューメクタントの保湿と、水分の蒸発を油分などで防ぐエモリエントの保湿、2つがそろってはじめて完了することを忘れないようにしましょう。
お顔の保湿においては、化粧水をつけてから乳液やクリームを塗ることが当たり前になっていても、ボディだとそれが面倒に感じてしまう方も多いと思います。そのような場合、ボディの保湿は水分と油分を一緒に補えるような乳液やクリームか、みずみずしいテクスチャを重視するなら高分子の保護膜で潤い蒸発を防ぐゲルも良いと思います。
空気の乾燥を感じるようになると、とくにアトピー素因を持たない普通肌の方であっても、チクチク感やムズムズ感といったかゆみを感じることが増えてきます。こういった“掻痒感(そうようかん)”と呼ばれるチクチク感やムズムズ感は、刺激、肌、神経が関係することで起こります。まずはかゆみが発生するメカニズムを知って、スキンケアでかゆみのスイッチとなる刺激からガードすることがポイントです。
※こちらは2021年に収録した、OSAJIディレクター茂田正和による皮膚科学に基づいた解説のアーカイブです。
PROFILE
茂田正和
株式会社OSAJI 代表取締役 / OSAJIブランドディレクター
音楽業界での技術職を経て、2001年より化粧品開発者の道へ進み、皮膚科学研究者であった叔父に師事。2004年より曽祖父が創業したメッキ加工メーカー日東電化工業の化粧品事業として多数の化粧品を開発、健やかで美しい肌を育むには五感からのアプローチが重要と実感。2017年、スキンケアライフスタイルを提案するブランド『OSAJI』を創立しディレクターに就任。2021年にOSAJIの新店舗としてホームフレグランス調香専門店「kako-家香-」(東京・蔵前)、2022年にはOSAJI、kako、レストラン『enso』による複合ショップ(鎌倉・小町通り)をプロデュース。2023年、日東電化工業の技術を活かした器ブランド『HEGE』と、HEGEで旬の食材や粥をサーブするレストラン『HENGEN』(東京・北上野)を手がける。著書『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)。2024年2月9日『食べる美容』(主婦と生活社)出版。
interview : Kumiko Ishizuka