▼ちらし寿司であそぶ|第2回
OSAJI JOURNALでは、「朝夕」という屋号で料理を探求しているりえさんに、月に1度、その時の探求結果を発表してもらう場を設けました。その名も『お料理あそび』。野菜や野草や、季節の香り。軽やかに地球の素材を楽しむりえさんの、その旅路をお裾分けします。
朝夕の松井理恵です。
日々、素材やお料理を探求し、お料理教室をしたり、ときどきお料理を振る舞ったりしています。
第2回目のテーマは「ちらし寿司」。
最近、私のお料理教室の構成として「土台と展開」をベースにしようと思っています。このコラムのタイトル通り、お料理は、“あそび”=展開が楽しいのだけれど、それだとふわふわと浮きすぎてしまう。
逆に、土台がしっかりとあることで、体調や気分、季節の変化でいくらでも自由にあそべる、ということに気が付いたんです。
そういう意味でも、今回のテーマである「ちらし寿司」は、分かりやすいベースもあるし、いくらでもあそべる要素がある、とっても楽しいお料理です。
Tips 1 /ベーシックを知る
みなさん、ちらし寿司はどんな時に食べますか?
春のイメージ、もしくはお祝い事のイメージでしょうか?
年に数日、特別な時にしかつくらないなんて、もったいない!
ちらし寿司は、ベースさえ覚えておいたら、四季の自然を織り込観ながら、どんなふうにでも展開できるのです。
それに、簡単で、見た目もキレイで、季節感が出せるので、お家に来客があるときのおもてなし料理にもぴったり。魚介やお肉を入れるとご馳走感も楽しめます。
だから私は、年中いつでも、ちらし寿司をつくっています。
〈memo〉
基本のすし飯の分量はこちら。
米 2合
水 360g
昆布 5cm
【寿司酢】ご飯の量(1合300g)に対しておよそ10%
千鳥酢/赤酢 大3
粗糖 大1
塩 小1
干し椎茸とにんじんの煮物や、茹でぶきなどを混ぜると、さらに美味しいベースに!
Tips 2/ちらし寿司はキャンバス!
すし飯のベースは、ご飯、糖分、塩分、酸味。
それを分解して考えると、その成分は他の食材や調味料でも代用できてしまいます。
そう考えると、一気に自由度が増して楽しくなってきませんか?
「レシピ通りに作らなくちゃいけない」と思って、料理が嫌になる人も多いと思うのですが、お料理の本当に楽しいところって、そうじゃない。
その時の体調や気分、季節、家にあって使いたい食材を、もっと臨機応変に自由に使って、あそんじゃっていいんです。
まさに、ちらし寿司はキャンバス!
〈memo〉
すし飯のベースである 糖分、塩分、酸味の代用例は…
◇糖分→ 季節の果実(いちご、オレンジ、パッションフルーツ…)
◇塩分 → しば漬け、糠漬けなどお漬物なんでも/梅/塩麹…
◇酸味 → 柑橘汁/白ワインビネガー/アップルビネガー/赤酢/黒酢
ここに挙げたもの以外でも、いいかも、と思ったら、どんどん試してあそんでみてください。
この構成要素さえ頭に入れて、酢飯さえ美味しくつくることができたら、エンドレスにあそべるのが、ちらし寿司の良いところ!
食材選びは、食感と香りを意識すると楽しいですよ。
ハーブを散らしたり、シャキッとしたフレッシュな食感をのせてみたり…。可能性は無限大です。
Tips 3/季節のテーマであそぶ
ちらし寿司の土台と展開に慣れてきたら、ぜひ、季節のテーマを決めて、あそんでみてください。
例えば、新茶の季節には、淹れ終わった茶葉を混ぜ込んでもいいし、冬は真っ白な食材だけを使って、真っ白なちらし寿司もいいな。
逆に、飲みたいお酒から発想することもあります。
ロゼワインを飲みたければ、苺や海老などピンクの食材を集めて、ピンクペッパーとチーズもいいな。
先に、どんな食材を使って、どんな場所でどんなふうに楽しみたいかイメージを膨らませて、想像していくんです。
盛り付け方によっても雰囲気ががらりと変わるので、それも楽しめる要素の一つ。
ベーシックな寿司桶もいいけど、日本の石皿や洋風のアンティークのお皿に豪快に盛りつけてもカッコいいですね。四角い寿司桶に1人ずつ盛り付けたら、よりおもてなし感が出そう。
〈memo〉
春の食材メモ/山菜、つくし、たけのこ、木の芽、うるい、こごみ、青豆類、いちご…
夏の食材メモ/薬味、新生姜、実山椒、大葉、みょうが、みずみずしいきゅうり、新蓮根、枝豆、パッションフルーツ…
秋の食材メモ/銀杏、栗、きのこ、にんじん、ぬかご、落花生(綺麗な「吹き寄せ」のイメージ)…
冬の食材メモ/根菜、大根、レンコン、百合根、キンカン、ゆず…
例えば、ルッコラと魚介などしっかりとした味の食材同士を組み合わせたり、菜の花としらすなど柔らかいもの同士を組み合わせたり、“食材同士のトーンを合わせる”のも、美味しくつくるポイントの一つです。
「ちらし寿司」の楽しさ、感じていただけましたか?
みなさまも、どんどんお料理であそんでみてくださいね。
次回の『お料理あそび』も、お楽しみに!
PROFILE
松井理恵
「朝夕」主宰 | 料理研究家
三重県生まれ。様々な食の仕事を経験後、味と香りの幅を広げるためドイツに2年半滞在し、表現としての食のあり方に触れる。現在は滋賀県を拠点に「朝夕」という屋号で料理教室、料理会、レシピ開発、食まわりのコーディネートなどを行なう。