2023.4.30

カイトさんの偏愛=作者の偏愛を感じる本|第1回

生きることは、愛すること。

自分の「偏愛」を見つけられたら、こんなに幸せなことはありません。

自分だけの美しさを、そのまま認めて愛していくこと。それが美しく生きるということ。そんなOSAJI JOURNAL的「偏愛ミニコラムリレー」をお届けします。

誰にも分からなくてもいい。でも、共有できたらちょっと嬉しい。

あの人の偏愛するもの、愛するポイント、いつもの愛で方まで。

これを読んでいるあなたにも、その愛をお裾分けします。


▶︎偏愛リレー 第1回|高村快人さん(クリエイティブディレクター)

▶︎推薦人|茂田正和(OSAJIディレクター)

▶︎推薦文|「最初にカイトくんの偏愛を聞きたいと思ったのは、流行りや世の中の流れでなく、自分基準で物事を決める人だから。そういう意味で、“正しく美しいクリエイター”だと思います。彼は飲み仲間でもあって、地方出張の時には必ず彼に美味しいお店を聞くことにしています!」

●カイトさんについて

「普段は、鎌倉を拠点として、デザインの仕事をしています。企業や地方自治体のブランディングをしたり、鎌倉材木座では、1日1組限定の『MAYA』というホテルを運営しています。趣味は町中華通い。実は一番の偏愛は、町中華かもしれないですね(笑)」

●カイトさんの偏愛

『作者の偏愛を感じる本』

●愛で方

「夜、寝る前に眺めています。キャプションや写真の撮り方、デザインなど、作者の主義主張や変態性を感じる部分を探りながら読み込みます」

●偏愛ポイント

「“こんなことまでする?” “これあなたがやりたかっただけだよね”と思うような、そこまでやる必要がないし求められてもいないのに、自分の欲求に忠実に、変態的なつくり方をしている本を偏愛しています。

特に気に入っているのは、『世界の食卓 世界24か国の家族のごはん』(TOTO出版)

作者が世界中を回り、一家族の食料を全て並べ、同じ撮り方で写真を撮り、その国の食文化を取材して紹介している本。これは、そのために世界中を周って取材する工程自体、相当大変なのに、食材の並べ方に小技を利かせていたり、作者がこの写真を撮りたいだけでしょ、というところがいい(笑) 

中身も面白くて、例えばグアテマラの一家の野菜や果物ばかりの食卓と、アメリカの一家のコーラとスナックだらけの食卓は、全く違うんですよね。これは隅々のキャプションまで何度も読み込んでいる一冊です。

ほかにも、『自炊。何にしようか』(高山なおみさん・朝日新聞出版)は、主義主張のある料理本の最たるものだと思うし、『南インドのキッチンの旅』(齋藤名穂さん・タラブックス)も、自分で旅して、キッチンを中心とした家の動線だけをまとめているのが変態だなぁ、と。

『ほしいも学校』(佐藤卓デザイン事務所)もやばいですよ。「ほしいも」だけで辞典みたいな厚さの本になるくらいだから(笑)中身も、ほしいもの乾燥剤比較とか、そんなところまで?というところが最高です。

デザイン的に美しい変態本は『Good Dog:A Collection of Portraits』という犬のポートレートを集めた本。全犬、カメラ目線で同じ撮り方。一本一本の毛並みまではっきり見えるほどの綺麗な写真。まず動き回る犬を撮ること自体難しいのに。

まだまだたくさんありますよ。切手の作者だけにフォーカスした本とか、友達がつくっている『左利きの女』という本だったり。特定の業種の人だけがみる業務本も好きですね。

多分、「自分も本当はこういうことをして生きていきたい」という願望があるんだと思います。自分だったら何の本をつくるか、それを見つけるために、こういう本を集め続けているのかもしれませんね」


高村快人

10T 株式会社代表 / クリエイティブディレクター

企業や地方自治体のブランディング、また自社事業ではホテル運営を行う。鎌倉材木座に1日1組限定のホテル『MAYA』をオープン。


Instagram: @maya_kekkon_no_hi