▼涼しい麺であそぶ|第5回
OSAJI JOURNALでは、「朝夕」という屋号で料理を探求しているりえさんに、月に1度、その時の探求結果を発表してもらう場を設けました。その名も『お料理あそび』。野菜や野草や、季節の香り。軽やかに地球の素材を楽しむりえさんの、その旅路をお裾分けします。
朝夕の松井理恵です。
日々、素材やお料理を探求し、お料理教室をしたり、ときどきお料理を振る舞ったりしています。
第5回目、7月のテーマは「麺」。
夏になると、麺が食べたくなるのは何故なのでしょう?
こんな、うだるような暑さだと、食欲も減退。
ツルッとした涼しい麺を食べたくなります。
めんつゆで冷たい素麺を食べるのも最高なのですが、それだけじゃない。麺の種類、ベース、薬味。麺って、あそべる要素が本当にたくさんあるのです。
こちらが、今年の麺のマインドマップ。
ひとくちに「麺」と言っても、どんな組み合わせにするかによって、表情がコロっと変わるのが、麺の面白いところ。
〈麺のマインドマップ〉
特に、Tips1で紹介する「水キムチ」があれば、その日の気分によって、簡単にブレンドして遊ぶことができますよ。
Tips 1 /万能「水キムチ」さえあれば
「水キムチ」をご存知ですか?
「水キムチ」は、乳酸発酵のお漬物で、辛くないキムチのようなもの。私が知る限り、一番簡単で早い発酵食です。
基本的には野菜をお米の研ぎ汁と糖分、塩で漬け込み、夏場であれば、1〜2日で発酵します。だから、発酵食をこれから初めてみたい方にもおすすめ。
お米やオリゴ糖の糖分を餌として、野菜の常在乳酸菌が発酵していきますので、好きな頃合いになったら冷蔵庫へ入れると、数ヶ月持ちます。
そして、この「水キムチ」が本当に万能かつ、あそべる要素が満載なのです。
野菜や果実の個性(色や味)を引き出してくれるし、発酵後もフレッシュ感を楽しめるのが、水キムチの良いところ。
この上の画像もすべて「水キムチ」ですが、入れるお野菜やその組み合わせによって全く表情が違います。
(左から、夏野菜たっぷりの水キムチ/いろんな色のトマトとニンニク、新生姜の水キムチ/ビーツとスモモと桃と赤玉ねぎの水キムチ/大根とネギとせりの水キムチ)
今回は、基本の水キムチのレシピをご紹介しますね。
〈memo〉
水キムチのレシピ
【材料】作りやすい分量
お米の研ぎ汁 500g
a 塩 小さじ2 または 魚醤 小さじ3
オリゴ糖 小さじ1
お好みで 唐辛子 小さじ2/
にんにく/生姜/ネギ/昆布 適量
b 野菜 300g + あれば果物
塩 小さじ2(およそ3%)
【作り方】
1 お米の研ぎ汁を一度わかし、aを加え人肌まで冷ます。
野菜は食べやすい大きさに切り、水分が多い野菜は分量の塩をし、水分が出るまで30分ほどおき手で絞る。
3 煮沸した瓶、または清潔な容器に①②を加え表面が空気に触れないようにラップをかぶせておく。
4 常温において発酵させる。(春夏は1-2日、秋冬は3-4日)
その後冷蔵庫に移す。2週間ほどで食べ切るようにする。
◎研ぎ汁の代わりに水500mlに上新粉小さじ1を溶かし沸かして冷ましたものでも良い
◎オリゴ糖の代わりに蜂蜜、粗糖、甜菜糖、甘糀など他の甘味に変えても良い
野菜は、旬なものや、その時に冷蔵庫にあるものを。
野菜は一種類でも良いけれど、私は、何種類も入れてその旨みの組み合わせを楽しむのが好きです。
「絶対これじゃなきゃダメ!」と思い込んでしまうよりも、「この野菜も入れてみようかな〜」というあそびが大事だなぁ、と思います。
例えば、韓国の伝統的なキムチには、よくりんごが使われます。果実を一緒に入れると、果実の糖分が乳酸菌の発酵を促してくれるのでおすすめなのですが、夏場の今はりんごは旬じゃないので、今回は桃やスモモを入れてみました。
スイカの皮やパイナップル、これからの季節なら、ぶどうや梨もいいですね。
ハーブなど、香りのものを入れてみるのも楽しいです。キュウリと一緒にディルを入れたり、相性の良さそうな野菜とハーブを組み合わせてみると、香りや風味が変わっていい感じです!
このいろんな野菜でつくった「水キムチ」があれば、涼しい麺料理のアレンジもすぐにできます。
お料理教室で、生徒さんとみんなでブレンドしてつくったこの麺は、ビーツの水キムチと、鳥ささみの茹で汁を合わせて、スイカや、初夏の野草であるスベリヒユを載せて。
Tips 2/和える、つける、かける
麺料理の基本の食べ方は、和える、つける、かけるの三つ。
何の麺にするか、どの具材と合わせるか、ベースの味を何にするか、どの食べ方にするか。
その四つの要素の組み合わせだけでも、あそび方は無限大。
要素に分解して再構築すると、思わぬあそびが生まれてきます。
今回のお料理教室では、桃とトマトと茗荷の和え麺をつくってみました。
〈memo〉
レシピ/桃、トマト、茗荷の和え麺
【材料】2名分
桃 1個
トマト 2個
茗荷 2個
そうめん 2束
塩
ナンプラー
煎りココナッツ
バジル
【作り方】
1 桃とトマトは食べやすい大きさに切り、塩を振って冷やしておく
2 茗荷は千切りし、水にさらす
3 そうめんを茹でて冷水で洗い、①で和え、ナンプラー少々で味を整え煎りココナッツとバジルをまぜ器に盛る。
◎塩とオリーブオイル、柑橘やワインビネガーで仕上げると カッペリーニも応用できる
この麺は味わいがとっても爽やか。
男性や子どもは変わったものが苦手な方が多いですが、その場合は、ナンプラーやココナッツは抜いて、桃とトマトと塩とスダチのみでも十分美味しいです。
要素を分解して把握しておけば、家族の好みや、相手に合わせて、いくらでも内容は変えられます。
私のレシピには、「こうじゃなきゃダメ!」というのは一切ありません。ぜひ、いろいろと試してみてくださいね。
Tips 3/追加の味で、あそぶ
麺の楽しいところは、もう一つ。
追加の味で、いくらでも味変をして楽しめるところ。
これはもう、最初のマインドマップの右下、「追加の味」の欄から、ご自身の好きなように、食べながらどんどん遊んでいくだけなので、理屈はいらないですね。
〈memo〉
“追加の味”の楽しみ方
(例)ジャージャー麺
最初は普通に食べて
↓
パクチーやルッコラを足したり
↓
こっくりとした味わいなので、途中で黒酢をかけてスッとさせても◎
↓
後半は豆乳を入れてマイルドに!
酢を入れた後に豆乳を足すと、豆乳が酸に反応して固まるので、良い感じに麺に絡みます。
ちなみに、ジャージャー麺の手づくり肉味噌のポイントは、ひき肉の量と同量の野菜を入れること。季節のお野菜をたっぷり入れて、楽しんでくださいね。
今回は、「涼しい麺」についてお届けしました。
「水キムチ」、簡単なので、ぜひ夏の麺のお供につくってみてくださいね。涼しい麺で、暑い夏を乗り切りましょう!
PROFILE
松井理恵
「朝夕」主宰 | 料理研究家
三重県生まれ。様々な食の仕事を経験後、味と香りの幅を広げるためドイツに2年半滞在し、表現としての食のあり方に触れる。現在は滋賀県を拠点に「朝夕」という屋号で料理教室、料理会、レシピ開発、食まわりのコーディネートなどを行なう。