6月はハーブチーズとハーブバター|第4回

ハーバリストである葉子さんの「くらしを綴る植物たち」をご紹介するコラム連載。

葉子さんが暮らしと研究を行う京都のハーブガーデンから、毎月、暮らしに寄り添った季節のハーブ処方と、その楽しみ方をお届けします。


新緑の眩しい5月が終わり「梅雨」という言葉をニュースから耳にし始める頃です。

私は毎年庭のハーブたちの間引きや剪定をと、心慌ただしくなる日々を過ごしています。

今日のハーブのお楽しみは?

私の庭のハーブたちのほとんどは、地中海沿岸が故郷。蒸し暑い京都で暮らす私に、地中海のそよ風と、カラッと乾いた透明な空のイメージを映し出してくれています。

しかし、庭に出ると「空気が重い」と感じる頃、突如様々な虫たちがハーブを襲い始め、雨が降り続きます。庭のハーブたちにとっては、梅雨時の湿度と虫は正に致命傷です。

土際にたまる湿気を追い出し、重なり合う葉を間引き、土の畝を整えて少しでも居心地よくなるよう、心を配ります。

剪定した葉や枝、咲き始めた花々、大地を捉える根。さあ、私の目の前にお宝の山が出来上がりました。お風呂に入れるハーブの束、来年までのストックハーブ、押し花やミニブーケetc.。そしてハーブチーズとバター!

<ガーリックとハーブのエスカルゴバター>

※フレッシュハーブはみじん切り

有塩バター 150g
チャイブ 大さじ1
イタリアンパセリ 大さじ1.5
ディル 大さじ0.5
イタリアンオレガノ 大さじ0.5
にんにく 1/4片
白コショウ 少々

常温に戻したバターは、空気を含ませるように木べらでよくかき混ぜておき、全ての材料を加え混ぜ合わせます。

出来上がったハーブバターは筒状にオーブンシートで包み、冷凍で約3ヶ月・冷蔵では1週間保存可能です。

オリーブオイルで軽く炒めた殻付きのアサリに白ワインを振りかけ、エスカルゴバターを溶かせば、その香りだけで我が家のごちそうの出来上がり!

<フェンネルのクリームチーズ>

クリームチーズ 150g
フェンネル 大さじ2
スィートマジョラム 大さじ0.5
レモンタイム 大さじ0.5
レモンバーベナ 大さじ0.5
スライスアーモンド 大さじ1
お好みのドライフルーツ ひとつまみ
黒コショウ 小さじ1/4
天然塩 少々

常温に戻したクリームチーズは、空気を含ませるように木べらでよくかき混ぜておき、全ての材料を加え混ぜ合わせます。

ラップを敷いたバットに薄くのばして冷蔵し、ダイスカットにしてサラダのトッピングに。マスタード入りのマヨネーズと和えて、サーモンとレタスでサンドイッチにするのもおすすめです。

クリームチーズは、冷蔵し3日間以内に召し上がってください。

今回のレシピの中で特にチーズとの相性がよく、おすすめのハーブはフェンネルです。東洋医学では膨満感をやわらげ腸を健康に保つ効果が期待される「茴香」(ウイキョウ)として有名です。古代ギリシャでは痩せるという意味の「マラスロン」と名付けられ、オリンピアたちの体を強靭でしなやかに保つためのハーブとして利用されました。

6月の庭の想い出

むせ返るほどのハーブたちの命の香りに包まれて庭仕事をしていると、決まって私の隣で土いじりを始めるまだ幼かった娘。蚊に刺されたおでこに、セージとハッカの葉をもんで当ててあげると、驚いたように目をまん丸くして、もっと蚊に刺されている可愛い膝小僧を見せてくれました。

あの日の空にも、夏が来ることを教えてくれる、梅雨入り前の雲が眩しく輝いていました。

7月は、夏野菜のピクルスづくりを楽しみましょう。来月もハーブの庭からお話しします。


葉子 Youko ハーバリスト

ハーブスクール&プロデュース ウィズハーブ 代表、NPO 法人日本ハーブ振興協会 主席研究員 、財団法人日本家庭園芸普及協会 グリーンアドバイザー、NHK 学園 ハーブ生涯学習 1 級インストラクター、H15 日本園芸協会 ハーブコーディネイター部門 最優秀成績賞受賞

ハーブ講師として、全国のセミナーや講演会においてハーブを広く普及させるための活動を行う傍ら、ハーブ研究家として各地のハーブガーデンのプロデュースや商品開発、NHKをはじめとするメディア出演、ハーブ専門誌でのコラム執筆などを手がける。



Instagram: @youko_with_herb