4月はハーブ染め|第2回

ハーバリストである葉子さんの「くらしを綴る植物たち」をご紹介するコラム連載。

葉子さんが暮らしと研究を行う京都のハーブガーデンから、毎月、暮らしに寄り添った季節のハーブ処方と、その楽しみ方をお届けします。


ジーンズとTシャツ、そして七分袖のカーディガンとリネンのエプロン。それがこの季節の定番。ガーデングローブについた土の香りを楽しみつつ庭仕事のスタートです。

今日のハーブのお楽しみは?

今日のハーブのお楽しみは?

お気に入りのティーカップに摘みたてのカモマイルの花を三輪。

沸騰したお湯を注ぐと、澄み透るライムグリーンの彩りと、微かな甘味。小さなティーカップに春の喜びが溢れるひと時。

カモマイルの優しさを堪能しながら、今日はフレッシュハーブで染物を楽しむ計画を練っています。

不器用な私は、本格的な染め方をあきらめて、お手軽な同浴染めと決めています。

今日のフレッシュハーブは、茂りすぎたローズマリーと頂き物のバラ、季節外れに花をつけてくれたブルーマロウ。冷蔵庫から取り出したブルーベリーやラズベリー。ドライのハーブもいろいろと・・・。

材料は庭にもキッチンにもたっぷりです。

<同浴染め>

・ハーブ:各1カップずつ(ネットに入れる)
・水:500mL 氷:500g ミョウバン小さじ1 
・染める素材(今回は刺繍入りの木綿)

①水とハーブを片手鍋に入れて中火にかける
②沸騰直前で火を止めミョウバンをよく溶かす
③氷を加えて温度を下げ、ハーブを取り出し、布を浸す
④中火で60度まで温め、時々素材を返しながら40度以下までゆっくりと冷ます
⑤流水で優しく洗い、乾かす

ミョウバンで染めると、何もかもが優しいアースカラーに。素肌にすっと溶け込む優し気な彩りに染まります。

果物やバラの花びらは、火を使わない酢酸染めでピンクや紫色を楽しみます。

そしてもうひとつ、丸く切り抜いた画用紙も染めて、色見本のように並べて記念撮影。
ハーブで染め上げた木綿の柔らかな布を、4月の窓辺で乾かしていると、窓に虹がかかったかのよう。

ハーブ染めの思い出

 娘は一人っ子。「お姉ちゃんのおさがり」という言葉の響きは、ずっと娘の憧れでした。

ある日ハーブ教室の生徒さんがくださった、「もう着なくなったオフホワイトのセーター」が、小学2年生の娘の願いを叶えてくれました。でも、襟元には少し目立つシミが…。シミを見つめながらハッとしたように目を輝かせて娘が言った言葉は「ハーブで染められる?」

バラの赤い花びらを煮出し、ミョウバンを加えると深い小豆色に、セーターを優しく浸して、水で洗うと今度は甘味のあるグリーンに。植物の色の不思議に目を大きく見開いて真剣に見つめる娘。お庭のガーデンベンチを何とか二つ並べて、大切そうにセーターを平干ししました。

初めて自分で染めた「お姉ちゃんのおさがり」のセーターは、小学2年生の娘がやっと大人物のセーターを着れる身長になるまで、ずっと一番のお気に入りでした。

5月は、フレッシュハーブティーを楽しみましょう。来月もハーブの庭からお話しします。


葉子 Youko ハーバリスト

ハーブスクール&プロデュース ウィズハーブ 代表、NPO 法人日本ハーブ振興協会 主席研究員 、財団法人日本家庭園芸普及協会 グリーンアドバイザー、NHK 学園 ハーブ生涯学習 1 級インストラクター、H15 日本園芸協会 ハーブコーディネイター部門 最優秀成績賞受賞

ハーブ講師として、全国のセミナーや講演会においてハーブを広く普及させるための活動を行う傍ら、ハーブ研究家として各地のハーブガーデンのプロデュースや商品開発、NHKをはじめとするメディア出演、ハーブ専門誌でのコラム執筆などを手がける。



Instagram: @youko_with_herb