▼オムライスであそぶ|第3回
OSAJI JOURNALでは、「朝夕」という屋号で料理を探求しているりえさんに、月に1度、その時の探求結果を発表してもらう場を設けました。その名も『お料理あそび』。野菜や野草や、季節の香り。軽やかに地球の素材を楽しむりえさんの、その旅路をお裾分けします。
朝夕の松井理恵です。
日々、素材やお料理を探求し、お料理教室をしたり、ときどきお料理を振る舞ったりしています。
第3回目、5月のテーマは「オムライス」。
なぜ、オムライスなのかというと、5月がトマトの旬だから。
トマトは真夏のイメージがあるけれど、実は本当の旬は4〜6月。トマトの原産国であるアンデス地方は、気温差があって乾燥している地域ですから、日本の真夏はトマトが育ちにくいのです。
「旬」ということは、栄養も高いし安く出回る時期。
そういう時に、旬を大切にして、トマトを買ってケチャップを作ろう!というのが、今回のテーマの始まりです。
ちなみに「卵」も季節的には、春が旬です。
自然の中で育つ有精卵は、産卵期である春が一番栄養を持っているのです。
今回使った卵は、滋賀の美味しいものを食べて自然の中で育つ鶏たちが、産みたい時に産んだ卵を使用しました。
〈オムライスのマインドマップ〉
さて、今回から、テーマについてのマインドマップを作成してみることにしました。(いつも作成はしているので、正しくは、清書することにしました、ですね。)
お料理をするとき、ひとつのテーマを考えるときに、必ず、極限まで分解して要素を書き出し、一つ一つ深掘りして再構築していきます。
そうすることで、深掘りできる要素やあそべる要素が見えてくるのです。
オムライスの場合は、「ソース」と「ライス」にあそべる要素がたくさんありますね。
今月は、お子様ランチのオムライスではなく、季節であそぶ、大人のオムライスをお届けします。
Tips 1 /ドライトマトご飯
オムライスといえば、ケチャップライス。
でも、最初にご紹介してみたいのは、「ドライトマトご飯」です。
オムライスの中身をドライトマトご飯にするだけで、味にコントラストや複雑味が出て、子どもっぽくない大人のオムライスに。
ドライトマトは、旨味成分であるグルタミン酸とグアニル酸を元々持っているので、お出汁や旨味調味料としての役割を果たしてくれるんです。
使い方も簡単で、干し椎茸みたいに戻しておけばOK。戻し汁ごと土鍋で一緒に炊くとペースト状になります。
オムライスとして包んでもいいし、そのままピラフとしてもいい。
〈memo〉
ドライトマト 20g
お湯 200ml
米 2合
水(ドライトマトのもどし汁と合わせて200g)
オリーブオイル 小さじ2
塩 小さじ1/2〜
季節の野菜 適量
【作り方】
①米を洗って30分吸水、30分ザル上げする
②ドライトマトを分量のお湯で戻す
③全ての材料を鍋または炊飯器に入れ炊く。炊き上がったら全体を混ぜる。
今回は、実えんどうと一緒に炊いていますが、季節の野菜であそべる展開もたくさん。
初夏は実えんどうやそら豆などの豆類、アスパラガス、新玉ねぎ、ズッキーニ、ヤングコーン、夏は季節ヤングコーン、とうもろこし、なす、インゲンなどもいいですね。
新生姜や新にんにく、鶏肉、豚肉(塩豚)、牛肉、ラム肉との相性も抜群です。
Tips 2/フレッシュトマトの基本ケチャップ
フレッシュトマトが出回るこの時期には、「トマトケチャップ」をぜひつくってみてください。
ケチャップは、なんといっても「香り」が重要!
作り方も本当に簡単で、トマトと玉ねぎ、にんにく、スパイスを一緒に煮詰めて、味を整えて終わりです。
エルブドプロバンスという南仏のハーブを入れると、とっても香りが良くなります。スパイスは全部、お茶の袋に入れて一緒に煮詰めるのが便利。
こちらが基本のフレッシュトマトケチャップのレシピです。
〈memo〉
フレッシュトマトのケチャップ
トマト 500g
玉ねぎ 60g
新にんにく 1片 ※にんにくは1/2片
粗糖 大さじ1/2〜・・・甘麹、甘酒などに変えても◎
塩 小さじ1
胡椒 少々
酢 大さじ1
《香》
ローリエ、シナモン、クローブ、赤唐辛子、ローズマリー、エルブドプロバンス、生姜、など
【作り方】
①トマト、玉ねぎ、新にんにくをミキサーにかけてピュレにしてザルで濾す。
②香の素材をお茶パックに入れ、ピュレとともに鍋に入れ1/2量になるまで煮詰める。
③お茶パックを取り出し、調味料を加え、味をととのえる。
清潔な瓶やタッパーに入れ、冷蔵庫で1ヶ月ほど保存可能。冷凍もできます。
※ホールトマトで代用する場合は、酸が強いので、玉ねぎを倍量にする。
もちろん、香りの要素はお好みで。
土台は本当にベーシックなものをご紹介するようにしているのですが、それぞれのご家庭のお家の好みや地元の旬のものに合わせて、レシピが育っていくといいなぁ、と思っています。
ベーシックなトマトケチャップは、老若男女問わず、きっとみんな大好きな味!今回ご紹介するオムライスはもちろん、ナポリタンにもいいし、ワインを足して煮詰めると、それだけで鶏やエビのソースにも。このベース一つでも、いろんな遊びに展開ができます。
この時期の熟成したトマトで作っておいて、冷凍しておくと、季節を問わず長く使えますよ!
Tips 3/フルーティなケチャップ
さて、ケチャップの要素を分解してみると、
ケチャップ=トマト、甘味、酸味、塩味+スパイスの香り、香味野菜 となります。
この要素を守れば、基本的にはケチャップになるので、どんな組み合わせも試してほしい!
特におすすめしたいのは、甘みを果物に変えてみること。
以前、「桃のケチャップ」を作ったら、フルーティでとっても美味しかったのです。
苺のケチャップ、完熟スモモのケチャップ、マンゴーのケチャップ、パイナップルのケチャップ、とかもいいですね〜。
ハーブも大いにあそべる要素なので、「このフルーツならどんな香り(ハーブ)が合うかな?」と想像して、実験のつもりで楽しんでみてください。例えば「苺のケチャップ」だったら、八角、アニスとかも良さそう!みたいな感じです。
〈memo〉
Tips2でご紹介した「フレッシュトマトのケチャップ」のレシピをベースに、トマト500gのうち100gをお好きなフルーツに変えてみてください。
トマト 500g → トマト 400g + お好みのフルーツ100g
味は、最後に味見をして、塩や酢で整えればOK!
香りも、「このフルーツならどんなハーブが合うかな?」と想像して、実験のつもりで楽しんでみて。
フルーツケチャップは、料理への妄想も広がりますね。パイナップル、マンゴーとか、南国の要素が入っているケチャップだと、アジア料理や中華料理との相性も良くなってきそう。エビチリに使うとか、パクチー、レモングラスとかにも合うかも…!
フルーティなケチャップっていいですよ。砂糖をたくさん使っていないのに甘くて、だから、しつこくないんです。
ご飯、ケチャップ、卵。オムライスも分解すると、あそべる要素がたくさんあります。オムライスのお料理あそび、楽しんでみてくださいね。
PROFILE
松井理恵
「朝夕」主宰 | 料理研究家
三重県生まれ。様々な食の仕事を経験後、味と香りの幅を広げるためドイツに2年半滞在し、表現としての食のあり方に触れる。現在は滋賀県を拠点に「朝夕」という屋号で料理教室、料理会、レシピ開発、食まわりのコーディネートなどを行なう。