2023.6.16

前田有紀さん flower artist|Living Tips

いろいろな制限に不便と感じる世の中でも
自分次第でほんの少し前向きな暮らしへとシフトできる。
OSAJI が出会う素敵な女性は、どんな変化をもたらし
どんな日常を過ごしているんだろう?
そこには学ぶべき暮らしのヒントがたくさんありました。

前田有紀さん

flower artist

フラワーアーティスト/スードリー代表取締役。10年間アナウンサーとしてテレビ局に勤務した後、2013年イギリスに留学。見習いガーデナーとして働いた後、都内のフラワーショップで2年半の修行を積む。現在は“花とあなたが出会う場所”をコンセプトに「gui」をプロデュースし、フラワーデザインの提案、ウェディングやイベント展示会装飾を手がけるほか、ワークショップなども開催する。4年前に鎌倉に引越し、4歳と1歳の男の子、ご主人の4人で暮らす。


不安な生活のなかで
気づいた息子の成⻑が嬉しかった

今までと同じようにはいかない生活が1年半も過ぎているんですよね…。最初の緊急事態宣言がでたときは⻑男が3歳で次男を妊娠中でした。未知のことだったので色々な面において不安が大きかったです。⻑男はもちろん、お腹の子をしっかり守らなきゃという想いが強く、責任感が増したときでした。子どもの保育園もお休みになったので、息子と一緒にガレージで水やりをしたり、配送を手伝ってもらったり。そうすることでお母さんの仕事は花屋なんだなという実感がわいたらしく、それから積極的にわたしの仕事を手伝ってくれるようになったんです。つい最近も子連れ出張をしたのですが、そのときも手伝ってくれたり、自分の着がえなどの準備をしていたりという姿を見て。そうやってわたしの仕事を手伝うことで息子なりに社会経験を積んでいるのかなと感じ、とても嬉しかったです。以前は会社がある東京と自宅がある鎌倉を往来する忙しい日々でしたが、自粛生活が続くなかでリモートワークにシフトしたんです。引越して4年が経ちましたが、最近になって鎌倉という地域で暮らすということはこういうことなんだと実感するようになりました。

子供のおもちゃや本はキャビネットに入れてディスプレイしながら収納。そこにTOLIGHT×guiの花瓶や手作りのドローイングフラワーを置き息子たちをイメージしたディスプレイに。手前左の花は鎌倉市農協連即売所で買ったショウガの花。普通の花屋ではない花が買えるのも市場の魅力。

鎌倉という街に目を向けることで
心地よさを感じることができた

リモートワークにシフトして時間に余裕ができたので魚屋さん、お肉屋さん、八百屋さんと、お気に入りの個人商店に通うようになりました。鎌倉には魅力的な個人商店がたくさんあり、お気に入りのお店のひとつに鎌倉市農協連即売所があります。そこには見たことがない鎌倉野菜が並び、調理方法も教えてくれるんです。野菜嫌いの息子を連れて行ったことがあるのですが、あそこのおじちゃんが作った野菜だよと言ったら食べてくれたんです! 魚屋さんに連れて行ったときには生きているタコをとても興味深く見ていたりも。作っている人、獲ってきた人の顔が見える安心感もありますし、こういうのが食育の一環としても大切なことだと思いました。子供を連れて行けばお店の人が「大きくなったね、保育園はどう?」と気さくに話してくれるし、鎌倉の野菜や魚を食べることも大切だと思いましたし、半径3kmのなかで完結する暮らしが心地よい日々になりました。また、庭のローズマリーやティーツリー、ゼラニウム、ミントを観賞しながらゆっくりするおうち時間もできました。ハーブ類は疲れたときに摘み取って新鮮なハーブの香りに癒されたり、小さなブーケにして飾ったり、使う分だけ切って料理やハーブ水としても活用しています。

できることからコツコツと楽しむ
サステナブルな暮らし

さらに月日が経つにつれ大好きな鎌倉を大切にしたいという気持ちが強くなり、小さな取り組みではありますがゴミを減らしてこの街の自然を守っていこうという家族の目標ができました。日々の暮らしを見直したとき、キッチンツールはプラスチック系が多いことに気づき、ゴミを減らすにはまずはここかなと思い、色々とリサーチしました。沖縄のmana. ORGANIC LIVINGのエコラップや竹の蓋の保存容器、自然素材のスポンジを使っています。マイボトルの持参もするようになりました。以前はその都度買っていたのを、朝市場に行くときにお茶を作って持って行くようになりました。家族で使うこともあるので大きめサイズを揃えています。そして、コンポストの導入です。たまたま実家にあったものを譲り受けて使ってみたところ目に見えてゴミが少なくなったんです。夏場はとくに生ゴミの匂いも気になっていたので一気に悩みが解消されました。庭にまくことで堆肥にもなるし、ゆくゆくは本格的なコンポストを庭先に作れたらいいなと計画中です。以前、環境活動家の佐々木依里さんと対談するお仕事があって、そのとき佐々木さんが「1人がやることって小さいことに見えるけど、年間を通してみるとかなり大きく変わることだから大事なことなんですよ」ということを話してくれて、それがとても励みになりました。全部じゃなくてもやれることから精神で、楽しくやることが続けるコツなのかなと思っています。

暮らしに花を取り入れることで
晴れ晴れとした気分に

花屋を経営しているのですが、最初の緊急事態宣言のときは花屋の出店もイベント装飾も一気になくなり不安でした。そのようななか、お花の農家さんも出荷量が減ったことにより市場に出しても値がつかない状況を知りました。できることはないかと考えた結果、農家から直接花を買いとってオーダーがあった個人宅に直送するサービスをはじめました。ステイホーム期間だったのでお花を飾る人が増え、花瓶を必要としている人がたくさんいることも知りました。それからスタッフと素敵な作家さん探しがはじまり、花瓶の販売をスタート。今ではわたしが1番集めてしまっているのですが(笑)。素敵な花瓶に花を飾ることがとても楽しく、花とグリーンを使って部屋のディスプレイを変えることも楽しみのひとつです。その日買ってきた花を主役にしてみたり、息子とドライブーケにしたものを飾ったり。毎朝お花の水換えするのがルーティン。鮮度を保つためだけでなく1日の始まりとしてすっきり始められるので好きな作業です。そんなお花がある暮らしを多くの子供にアプローチできたらと考えていて、今は鎌倉市と目黑区にある児童養護施設に廃棄される前の花を寄付する働きをしています。わたしも子育てをしている人間として、子供が当たり前に花を感じられる環境が大切だと思い、土をさわったことがない、花をさわってはダメと言われているお子さんが多いなか、わたしとしてはどんどん触ってほしい。花の種類によって質感や感触、色も形も違うので触ってもらって身近なものに感じてほしいと思っています。花がある暮らしは本当に素晴らしいことですから。

お気に入りの花瓶は、京都の作家さんのじりえみさんやTOLIGHT、FLASKA、葉山の作家さん矢嶋衣麻さんのもの。前田さんがセレクトした花瓶はguiのオンラインでも購入可能。https://gui-flower.shop

photo_Miho Kakuta
hair & make-up_Hikari Yamashita
edit & text_Kozue Takenaka