▼つねに揺らぎやすい、複雑な肌の状態。いま必要なケアとは?

肌や髪をより健やかに美しく整えたいと思ったその時に、寄り添うことができるのが美容という術であり、皮膚科学からのアプローチ。
“自分らしいあり方”を自分で見つけて、愛でるためのお手伝いを。肌の外側からはもちろん、内側からのケアの大切さを提唱するOSAJIディレクター 茂田正和が、さまざまなお悩みにお答えします。
頬のつっぱり感とおでこの皮脂の多さ、どちらも気になる。

Q.
最近、洗顔後につっぱりを感じるほどの頬の乾燥と、おでこは過去にニキビに悩んだこともあり皮脂の多さが気になります。
A.
皮脂と乾燥の両方が気になるということは、ギャップの大きいコンビネーション肌になっている状態といえます。皮脂の分泌量は、生まれながらの体質、その方の年齢、性別によっても変わってくるのですが、一般的に、ニキビは皮脂の分泌が関係するトラブルとされています。現時点ではニキビに悩んでいない、ということは以前より頬がつっぱって乾燥している点に着目すると、そのつっぱり感は肌の水分保持力の低下、バリア機能が弱くなっているサインだと思います。
とくに夏場は皮脂や汗によって肌がベタつきやすいため、「カサついていない部分は乾燥していない」と捉えてしまうケースが多いです。しかしながら、皮脂の分泌量が多いことと、肌の水分保持力が高いことは、決してイコールではないのです。表面のベタついている部分がインナードライ状態になっていて、それを補うべく皮脂が出ている可能性は大いにあります。洗顔後につっぱりを感じるということは、肌本来の水分油分のうるおいバランスが崩れる何らかの原因があるからで、その一つには洗い過ぎが考えられます。
原因の有力候補は、肌状態と洗顔の仕方のミスマッチ。

夜はメイクや1日の汚れをきちんと落とさないと、肌荒れの原因となるのでクレンジングは必須ですよね。なので、肌がつっぱるほど乾燥しやすくなっている時は、朝の洗顔をぬるま湯ですすぐのみにしてみることをおすすめします。なぜかというと、肌に備わっているうるおいバランスを保つのに必要な常在菌(美肌菌)は、洗顔料を使うと一旦ほぼ流れ落ちてしまうから。
常在菌(美肌菌)は、皮脂をエサにしてうるおい成分であるグリセリンや肌を弱酸性に保つのに必要な脂肪酸を作り出してくれます。肌の常在菌(美肌菌)バランスが整っていると、皮脂は水溶性の保湿成分であるグリセリンと肌を弱酸性に保つ短鎖脂肪酸に分解されます。肌の表面が弱酸性に保たれることでニキビを誘発するアクネ菌の毛穴内での増殖も抑えられます。また、洗顔料を使って洗うと肌の水分を閉じ込めておくために必要なセラミドなどの油分の一部も失われてしまいます。
洗顔料によって流れ落ちたセラミドなどの油分のバランスが戻るには、一般的に10時間程度かかるとされています。肌状態に対して洗浄力が強過ぎる洗顔料で朝晩洗っていると、肌は乾燥してカサつきやすくなり、皮脂腺が多い部分は体の防御反応としてさらに皮脂が出てくることも。
また、おでこの皮脂やニキビの発生が心配な時のもうひとつの対策としては、洗うケアに力を入れるより、保湿アイテムの油分の量を減らしてみることをおすすめします。化粧水の後は、オイルリッチな乳液やクリームでフタをするのではなく、オイルフリーの保湿ゲルなどを使うと、肌自身の水分油分のバランスを取り戻しやすくなると思います。
揺らぎがちな肌に安定感をもたらすには、タンパク質が鍵。

Q.
肌が常に揺らぎやすいのは、忙しいとコンビニご飯に頼ったり、おやつにチョコを食べてしまうせいでしょうか。
A.
自炊が少なくコンビニご飯に頼ってしまうことが悪いというよりは、体に必要な栄養素のバランスが崩れているのかもしれません。肌に限らず、タンパク質は全身の細胞の構造や機能を担う基礎となる栄養素です。このタンパク質をしっかり摂りやすいのはお肉やお魚ですが、忙しいと、おにぎりやパンなどの炭水化物だけですませてしまうことも多いと思います。摂取したタンパク質は、まず生命活動に使われて、肌や髪に届くのは最後のほうといえます。つまり、その人にとって1日に必要なタンパク質量が足りていないと、肌はもちろん髪などももろくなってきます。当然ながら、肌に備わっているバリア機能も弱まるので、外的な刺激を跳ね返しにくくなり、結果として肌状態が揺らぐのだと思います。
揺らぎにくい、つまり外的刺激に負けにくい丈夫な肌を育むインナーケアとして、自分に必要な量のタンパク質を毎日しっかり摂ることは、老若男女問わずとても大切です。まずは、「自分にとって1日に必要なタンパク質量は何gか?」というところを把握するところからスタートしてみましょう。「自分の体重×1g」で計算できます。例えば50kgの人なら、50gのタンパク質が1日の必要量。とはいえ、例えば鶏のムネ肉を食べて50g近くのタンパク質を摂ろうとしたら250gくらい食べる必要があるので、何回かに分けると摂りやすくなります。
1日に必要なタンパク質量を満たすことを、まずは2週間くらいやってみるだけでも、何らかの変化を実感していただけると思います。僕自身、1日に必要なタンパク質量の摂取を意識し始めた当初は、肌がしっかりする感じや爪の伸びの早さを実感しました。コンビニで昼食を買う時は、おにぎりと一緒にタンパク質の豊富なサラダチキンを買ってみたり、おつまみ感覚で補充するのも良いと思いますよ。
脂質の多い食べ物が好きな人はビタミン「B6」を意識して。

チョコレートについては、食べ過ぎるとニキビの出来やすさなどに繋がるかもしれませんが、おやつに少しだけとかであれば、そして、脂質の代謝を促す栄養素が足りていれば問題ないと思います。具体的に言うと、脂肪の代謝を促すビタミンB6が足りている状態です。ビタミンB6は魚や肉の赤身に多く含まれている栄養素ですが、おやつに良さそうなバナナやサツマイモにも多く含まれています。忙しくて食事で意識するのが大変な時は、サプリメントなどで取り入れても良いと思いますよ。
PROFILE
茂田正和
株式会社OSAJI 代表取締役 / OSAJIブランドディレクター
音楽業界での技術職を経て、2001年より化粧品開発者の道へ進み、皮膚科学研究者であった叔父に師事。2004年より曽祖父が創業したメッキ加工メーカー日東電化工業の化粧品事業として多数の化粧品を開発、健やかで美しい肌を育むには五感からのアプローチが重要と実感。2017年、スキンケアライフスタイルを提案するブランド『OSAJI』を創立しディレクターに就任。2021年にOSAJIの新店舗としてホームフレグランス調香専門店「kako-家香-」(東京・蔵前)、2022年にはOSAJI、kako、レストラン『enso』による複合ショップ(鎌倉・小町通り)をプロデュース。2023年、日東電化工業の技術を活かした器ブランド『HEGE』を手がける。著書『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)。2024年2月9日『食べる美容』(主婦と生活社)出版。
interview : Kumiko Ishizuka