▼そばかすやあごの吹き出物…。大人の肌とホルモンの密な関係

肌や髪をより健やかに美しく整えたいと思ったその時に、寄り添うことができるのが美容という術であり、皮膚科学からのアプローチ。
“自分らしいあり方”を自分で見つけて、愛でるためのお手伝いを。肌の外側からはもちろん、内側からのケアの大切さを提唱するOSAJIディレクター 茂田正和が、さまざまなお悩みにお答えします。
20代後半から急に気になる“そばかすのシミ化”。美白ケアが必要?

Q.
10代の頃はそばかすがあっても気にならなかったのに、20代後半から濃くなってきた気が…美白ケアで防げますか?
A.
美白化粧品について僕から言えるのは、「肌が明るくなったように感じることはあるかもしれないけど、“完全にシミを消す”ことは不可能」ということです。
10代の頃からあったそばかすが、日常的にUVケアをしていても20代後半あたりから濃くなったと感じる場合、紫外線だけでなくホルモンバランスが関係している可能性があります。
女性の月経周期は卵胞期、排卵期、黄体期に分けられますが、排卵後から月経を迎えるまでの「黄体期」は、黄体ホルモンの分泌が増加し、メラニンがつくられやすくなります。そのため「月経が近づくと、シミ・そばかすが濃くなった?」と感じる女性はわりと多いと思います。
シミにはさまざまなタイプがあり、特にホルモンの影響を強く受けやすいのは、「肝斑(左右対称の薄茶色のシミ)」です。一方、そばかす(シミのタイプとしては雀卵斑と呼びます)は遺伝が大きく関係しているといわれています。肝斑とそばかすが重なって見えることも多いので、気になる場合はクリニックなどで正確な診断を受けてみると安心ですよ。
弱酸性ケアで、肌のターンオーバーリズムを整えよう
セルフケアで望ましいのは、角層のターンオーバーを正常化すること。ターンオーバーがスムーズであれば、過剰にメラニンがつくられても不要になった角質とともに日々排出されます。
20代の健康な肌では約28日周期ですが、30〜40代 になると約45〜50日は必要といわれています。そうなると、化粧品が好きな方の中には、スクラブやピーリングのような角質ケアアイテムを使ってみよう、という発想になる方もいるかもしれませんが、肌が敏感、あるいは揺らぎやすい自覚がある場合、自己流で使うと肌に大きな負担をかけやすいので注意が必要です。

そこでおすすめなのは「弱酸性の化粧水を毎日たっぷり使うこと」。健やかな角層は弱酸性に保たれていると、然るべきタイミングでターンオーバーをするという、素晴らしい機能が備わっています。多くの化粧水は弱酸性でつくられているので、日々のスキンケアで角層をうるおわせながら肌表面のpHを弱酸性に整えることが、基本の「き」です。
さらに内側からのケアも大切です。食事からビタミンCやビタミンE、ポリフェノールといった抗酸化成分をしっかり摂取するのはシミ予防にとても有効です。難しい場合は、皮膚科の先生や薬剤師さんに一度相談しながら、ターンオーバーの正常化に有効とされる「L-システイン」や、肝斑の予防などに用いられる「トラネキサム酸」を試してみるのもひとつかと思います。
月経前に出やすい“大人ニキビ”、ホルモンのせいかも?

Q.
コロナ禍のマスク生活あたりから、あご周りに吹き出物が頻繁にできるようになってしまいました…
A.
あご周りのニキビとも吹き出物とも言える肌荒れも、ホルモンバランスの乱れが原因の一つとして考えられます。月経前の約2週間は黄体ホルモンの影響で皮脂が増え、毛穴の中にたまりやすくなります。あご周りはもともと皮脂腺が多く、汗腺は少なくて乾燥しやすいので、過剰な皮脂が毛穴の中にたまり、赤みや炎症を伴うニキビやポツポツとした吹き出物が出やすい部分です。
この肌荒れを繰り返さないためには、まずストレスを溜めないことを心がけましょう。ホルモン分泌の調整を担っているのは脳の視床下部なので、ストレスや脳疲労が溜まるとホルモンバランスが乱れてしまいます。
月経前は意識的に休息やリフレッシュの時間を取りましょう。食事についても、あまりストイックに制限せず、偏食にならなければ、自分が本能的においしそうと感じるものを優先的に食べても良いと思います。体内での脂質の代謝を促し、きちんと分解するために必要な栄養素、ビタミンB群(B2、B6、ナイアシン、パントテン酸、ビオチンなど)が不足しないよう心がけると安心です。豚のヒレ肉や卵などに豊富に含まれていますが、カロリーが気になるときはサプリメントで補っても問題ないと思いますよ。
弱酸性×美肌菌で、揺らぎにくい肌へ
化粧品選びでは、肌の状態に合わせた保湿が大切です。グリセリンを多く含むアイテムは、角層のバリア機能をサポートして高い保湿力を発揮してくれる歴史の長い保湿成分ですが、脂性肌の方にとってはニキビの原因になることも。
また、マスク生活の影響であご周りの常在菌のバランスが乱れて、悪玉菌が優位になりやすくなっている可能性も高そうです。洗顔後は、善玉菌(美肌菌)が優位になる環境づくりとして弱酸性の化粧水で肌のphを整え、さらに善玉菌(美肌菌)のエサとなるプレバイオイティクス成分入りの美容液をプラスするのもおすすめです。最後に塗る乳液やクリームは、ニキビの原因菌であるアクネ菌を増やしにくいオイルフリー処方のジェルタイプなどもおすすめです。

PROFILE
茂田正和
株式会社OSAJI 代表取締役 / OSAJIブランドディレクター
音楽業界での技術職を経て、2001年より化粧品開発者の道へ進み、皮膚科学研究者であった叔父に師事。2004年より曽祖父が創業したメッキ加工メーカー日東電化工業の化粧品事業として多数の化粧品を開発、健やかで美しい肌を育むには五感からのアプローチが重要と実感。2017年、スキンケアライフスタイルを提案するブランド『OSAJI』を創立しディレクターに就任。2021年にOSAJIの新店舗としてホームフレグランス調香専門店「kako-家香-」(東京・蔵前)、2022年にはOSAJI、kako、レストラン『enso』による複合ショップ(鎌倉・小町通り)をプロデュース。2023年、日東電化工業の技術を活かした器ブランド『HEGE』を手がける。著書『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)。2024年2月9日『食べる美容』(主婦と生活社)出版。
interview : Kumiko Ishizuka