▼毛穴やクマの悩みには、まずキメを整えるスキンケアを
肌や髪をより健やかに美しく整えたいと思ったその時に、寄り添うことができるのが美容という術であり、皮膚科学からのアプローチ。
“自分らしいあり方”を自分で見つけて、愛でるためのお手伝いを。肌の外側からはもちろん、内側からのケアの大切さを提唱するOSAJIディレクター 茂田正和が、さまざまなお悩みにお答えします。
毛穴の開きや、くすみ対策はピーリングで解決?意外な落とし穴

Q.
毛穴やくすみが気になり、スペシャルケアにピーリングを取り入れたいのですが、肌があまり強くないので迷っています。
A.
毛穴が目立つ方の多くが、毛穴が詰まっていると考え、洗顔やピーリングを強化したりします。しかし、毛穴の中は影となって何も詰まっていなくても黒く見えるものなのです。実際、毎日クレンジングや洗顔で洗う人の毛穴が詰まっているというケースは意外と少なく、毛穴が目立つ原因は、肌の乾燥によって毛穴のが影となっているケースが多いです。そして、その状況で洗顔やピーリングを強化すると、肌はより乾燥して、悪循環に陥ることもあります。
確かにピーリングには、肌表面の不要な角質を取り除き、つるんとした肌に導く作用があります。ただ、僕の中では慎重さを要するケアの一つです。
子供の頃、セロテープを手や腕に貼って剥がしてみた経験はありませんか?ペタペタと貼って剥がすのを何回かくり返すと、その部分が明るくなります。それは肌のキメをつくっている角層が薄いグレーであるためで、セロテープでこれを剥がすと白く見えるのです。これは物理的に角層を剥がすという意味では、ピーリングでも同じことが起こります。いずれにしても、そうして強制的に角層を剥がし過ぎた部分は、キメが失われ、バリア機能が低下し、外的刺激やアレルゲンが入りやすくなり、炎症を起こしやすい状態になってしまいます。
そもそも毛穴の目立たない肌とは、キメとキメの間の皮溝(ひこう)と、キメのふっくらとした盛り上がりである皮丘(ひきゅう)のメリハリが整った状態を指します。例えるなら、山の連なりの谷間のようなイメージです。毛穴は、この皮溝と皮丘に挟まれた部分にあります。
角層の剥がし過ぎなどでキメのふっくら感が失われると、肌が弱くなるだけでなく、光が不均一に反射するようになり、毛穴が影となって目立ちやすくなります。 これが、皮脂が詰まっていなくても毛穴が黒く見える理由です。
バリア機能を低下させず、毛穴の目立たない肌を育むには
セルフで使えるピーリング化粧品も多く出ていますが、角層を剥がし過ぎない適度なピーリングを自分で調整することは難しいものなので、美容皮膚科での施術の方が肌トラブルリスクを避けやすいでしょう。
では、ピーリングアイテムに頼らないセルフケアは何をどうすれば良いでしょうか?それは、普段から自前の角層のターンオーバー機能が正常に働くよう、弱酸性の化粧水で肌表面のpHを整え、さらにふっくらとしたキメを保つために常在菌(美肌菌)を優位にする美容液を取り入れることです。
一朝一夕で、肌が劇手に変わるようなケアではありませんが、肌を丈夫にしながら毛穴を目立ちにくくしていけるアプローチです。
*弱酸性の化粧水で肌表面のpHを整え ターンオーバー機能を正常化することの重要性ついては前回の『そばかすやあごの吹き出物…。大人の肌とホルモンの密な関係』にて詳しく説明しているのでぜひ、あわせてご覧ください
肌のキメ乱れは、目元くすみの原因。ベースメイクを活かす肌づくり

Q.
コントロールカラーやコンシーラーを使っても目の下のクマが消えないのが悩みです。
A.
目の下の皮膚は角層が薄く、バリア機能が弱いため、肌のキメがとくに乱れやすい部分です。
1つ前のQでの、キメとキメの間の皮溝(ひこう)と、キメのふっくらとした盛り上がりである皮丘(ひきゅう)のお話を思い出してください。キメの整った肌は、皮溝が細くてふっくらとした三角形の皮丘が均等に並ぶ、キルティング生地のような状態です。そのようにキメが整った肌は、光がレフ板のようにまっすぐ反射しやすくなるので、コントロールカラーやコンシーラーが、アイテムの設計通りに発色します。
一方、キメが乱れていると光が乱反射し、くすんで見えてしまうのです。若いうちは、月経前などの肌が揺らぎやすくなっている時などに、このようなベースメイクの映えなさを感じがちですが、年齢とともに皮脂量が減ったり、角層が厚くなってくると慢性的に感じるようになるでしょう。
くすみの原因には乾燥、メラニン、血流の低下と3タイプあります。今回のお悩みの場合、一番有効なのは目元の皮膚が乾燥しないよう、ベースメイク前のスキンケアで手厚く保湿をすることだと思います。しっかりと保湿することで角層は水分に満たされて一時的にもキメが整い、続けることでだんだんと常時キメが整った状態をつくることができるようになると思います。また、保湿で重要なのは、水溶性の保湿剤で肌が水分を抱きやすくしたのち、その水分を逃げなくするという2段階の保湿です。オイルやワセリンなど油溶性のものだけで十分とは思わず、その前の化粧水での保湿をしっかりとしてください。
PROFILE
茂田正和
株式会社OSAJI 代表取締役 / OSAJIブランドディレクター
音楽業界での技術職を経て、2001年より化粧品開発者の道へ進み、皮膚科学研究者であった叔父に師事。2004年より曽祖父が創業したメッキ加工メーカー日東電化工業の化粧品事業として多数の化粧品を開発、健やかで美しい肌を育むには五感からのアプローチが重要と実感。2017年、スキンケアライフスタイルを提案するブランド『OSAJI』を創立しディレクターに就任。2021年にOSAJIの新店舗としてホームフレグランス調香専門店「kako-家香-」(東京・蔵前)、2022年にはOSAJI、kako、レストラン『enso』による複合ショップ(鎌倉・小町通り)をプロデュース。2023年、日東電化工業の技術を活かした器ブランド『HEGE』を手がける。著書『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)。2024年2月9日『食べる美容』(主婦と生活社)出版。
interview : Kumiko Ishizuka