▼肌の声は、体からのメッセージ。冬前に整えたいインナーケア

肌や髪をより健やかに美しく整えたいと思ったその時に、寄り添うことができるのが美容という術であり、皮膚科学からのアプローチ。

“自分らしいあり方”を自分で見つけて、愛でるためのお手伝いを。肌の外側からはもちろん、内側からのケアの大切さを提唱するOSAJIディレクター 茂田正和が、さまざまなお悩みにお答えします。


ゆらぎ肌で“何を使っても合わない”とき、まず試したいこと

Q.
3年前から、何を使ってもピリピリ感や赤みが…アレルギー検査をしても原因がわからず、スキンケアの迷子状態です。

A.
ピリピリ感や赤みは何らかの理由でバリア機能が低下して、皮膚が刺激に反応しやすくなっている状態かもしれません。アレルギー検査では原因を突き止められなかったとのこと。違和感なく使える化粧品がほぼない現状に対して、少しでも前進するために僕からアドバイスできることは、「日記を書いてみる」ことです。

少々面倒くさいかもしれませんが、箇条書きでOK。iPhoneやGoogleのカレンダーに、少しメモするくらいの要領で十分です。その日の肌状態と「今日は昼に○○、夜は××を食べた」という食事記録をつけてみてください。(余裕があれば、生理周期や睡眠、仕事の忙しさなどについて書いておくのもおすすめです)

季節や天候は、あとからでも情報をおえるので無理のない範囲で。そうすると「肌荒れを起こしたときに、いつも同じ要因が重なっている」というような傾向が見えてくることがあります。それが食べ物の場合、「しばらく口にするのをやめてみただけで、肌トラブルが落ち着いた」といった事は実際あるんですよね。

僕の知人もこの「食事の記録」をつけ始めてから、アレルギー検査では引っかからなかったウリ科のものを食べた後に肌が痒くなっていたことに気づけました。「またこの症状が出た!」というときに日記を振り返り、前に出たときは何を食べていたのか、その頃の体調はどうだったか、共通する点はないか比較してみてください。それで「前回も、これを食べた後に肌トラブルが起きた」といった疑惑が浮き彫りになればラッキーですし、食とは別に生理前に症状が悪化したとか、激しい寒暖差にさらされたとか、何かしらの要因を日記でつかめたら、ケアの選択肢が増えてくると思いますよ。


肌の調子を底上げする、“内側からの栄養ケア”

Q.
野菜をきちんと摂る、ミネラルウォーターにレモンを絞るなどしていますが、ゆらぎ肌から脱せません。どんなインナーケアをすれば?

A.
肌を健やかに保つには、細胞の土台となるタンパク質はもちろん、ビタミンやミネラルといった栄養素も確かに大切。野菜や果物を意識的に摂ることはもちろん良いと思います。しかし、現代の野菜に含まれるミネラルは、昔と比べてかなり減ってきてしまっていることが多いです。

もともと海だった土地が陸になったことで、何十年も前までは土壌に海洋ミネラルが豊富に含まれていましたが、そこで作物を連作したことで、現在の土は痩せて養分不足になっているんです。そのため、野菜だけで必要なミネラルをまかなうのが難しくなっています。

また、ミネラルウォーターに含まれているミネラルの量も、種類によりますがさほど多くはないんです。特に肌が不調なときは通常より多くのビタミンやミネラルを摂った方が良いので、普段の食事の補助としてサプリメントや、海藻をプラスするのがおすすめ。お味噌汁にワカメ、おかずにひじきやもずく、おやつ代わりに韓国のりを取り入れたり、マルチミネラルのサプリメントを摂ることでミネラル摂取量を増やせると思います。

ミネラルは、肌のバリア機能と関係が深い栄養素です。特にマグネシウムやカリウムが不足すると、バリア機能が低下する可能性があることが、海外の研究でも示唆されています。また海藻は、ミネラルのほかにアミノ酸やタンパク質、腸内細菌のバランスを整えるのに必要な食物繊維も多く含んでいる頼もしい食べ物です。

腸内で善玉菌が増えると、皮膚の常在菌にも良い影響を与えることがわかっています。また、腸内の善玉菌によってつくられる酪酸が毛細血管を通じて肌に届くと、皮膚の炎症を抑える働きがあるとも報告されています。つまり、腸の善玉菌を元気に保つことは、肌の健やかさにも直結しているんです。発酵食品を取り入れるのはもちろん、善玉菌のエサとなる海藻をこまめに摂ることも、酪酸を生み出しやすくするという点でおすすめですよ。

食べ方を見直せば、肌も応えてくれる

ミネラルウォーターにレモンを絞る、これはビタミンCを意識してのことと思いますが、それだと実は必要摂取量に届いていないことが多いです。特に肌が荒れることの多い花粉の時期などは、体内で細胞を酸化させる活性酸素が増えがち。日頃から、ビタミンCやマルチビタミンのサプリメントをプラスして体内の抗酸化を意識しておくことも、炎症を起こしにくい肌へのサポートになります。飲み方としては、朝昼晩の3回に分けるなど小まめに摂取しましょう。ビタミンCやビタミンB群のような水溶性ビタミンは、一度にたくさん飲んでも体に貯めておけず、尿とともに排泄されてしまいます。

僕自身は、肌や体調のトラブルがないときはサプリメントを摂りませんが、体調を崩しやすい時期はビタミンCを意識的に摂るなど、体の声を聞きながら調整しています。食生活を楽しみながら、状況に応じて自分で自分に処方箋を出せるよう、体の声に耳を傾けてみてくださいね。


PROFILE

茂田正和

株式会社OSAJI 代表取締役 / OSAJIブランドディレクター

音楽業界での技術職を経て、2001年より化粧品開発者の道へ進み、皮膚科学研究者であった叔父に師事。2004年より曽祖父が創業したメッキ加工メーカー日東電化工業の化粧品事業として多数の化粧品を開発、健やかで美しい肌を育むには五感からのアプローチが重要と実感。2017年、スキンケアライフスタイルを提案するブランド『OSAJI』を創立しディレクターに就任。2021年にOSAJIの新店舗としてホームフレグランス調香専門店「kako-家香-」(東京・蔵前)、2022年にはOSAJI、kako、レストラン『enso』による複合ショップ(鎌倉・小町通り)をプロデュース。2023年、日東電化工業の技術を活かした器ブランド『HEGE』を手がける。著書『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)。2024年2月9日『食べる美容』(主婦と生活社)出版。


interview : Kumiko Ishizuka

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