▼OSAJI collaboration cooking lesson | SPECIAL REPORT

「山菜×発酵調味料」で心身を整える。旬をつかまえて味わう、春の料理教室。

うららかな陽気に心弾む4月。山菜が続々と旬を迎え、初夏に向かって目まぐるしく季節が進んでいきます。一方で、花粉の影響や紫外線によって肌トラブルを引き起こしたり、新生活を迎え、環境の変化による疲れやストレスを感じたりしやすいのもこの時期。

そうしたなか、モデルの忍舞さんとOSAJIブランドディレクター 茂田正和によるコラボレーション料理教室が開催されました。献立は、腸内環境を改善するとともに自律神経のバランスを整える、発酵調味料と山菜をふんだんに使った6品。春薫る、彩り鮮やかな食卓の様子をお届けします。


【献立】
□…忍舞さん ■…茂田正和

□アスパラグリルのふきのとう味噌
□新玉ねぎと春キャベツの麹スープ
□新じゃがとクレソンのスパイス和え
□うどと舞茸の味噌柚子胡椒マヨ 山椒の葉添え
■こごみと海老の押し寿司
■せりと初鰹の押し寿司


「春の山菜や野菜が1年のなかで一番好きです。発酵食品をプラスすることで旨みがアップするので、さらにおいしくいただくことができるんです」。そう話すのは、モデルとして活躍する忍舞(しのぶ)さん。出産後の体質の変化を機に、野菜や魚を中心とした食生活を始めました。現在は手づくりの発酵調味料を取り入れた料理を研究しながら、料理レッスンなども開催しています。

忍舞さんの料理や食のアプローチには共感する部分があるという茂田は、自著『食べる美容』で「本来、必要な栄養素は体が知っている。『食べたい』『おいしそう』といった本能的な感覚を大事にしながら楽しむ気持ちが最優先」(書籍より一部抜粋)と述べています。

今回のレッスンでは、山菜や春野菜に発酵調味料を使った4品を忍舞さんが、春らしい押し寿司2品を茂田が担当。ふたりの講師によるトークを交えながらのデモンストレーションを行ったあと、参加者の方に完成した料理をお召し上がりいただきました。


「手間ひまかけすぎない」山菜料理の心得。

「手抜き」と「手軽」という言葉は似て非なるもの。手軽であるということは、そこには何らかのアイデアが宿っています。最低限の調理道具と調味料を味方につけることで、簡単でおいしいだけでなく体の内側から美しく健康に。日常のなかでいかに取り入れやすいかというのも重要なポイントです。

「山菜というと下処理がたいへんなイメージがあるかもしれませんが、ぜんぜん難しく考えなくて大丈夫です。えぐみというのも旨みのひとつであり、尚且つそれは体に良いものでもあるんですね。山菜のあくにはポリフェノール成分が含まれていて、強い抗酸化作用があります。忍舞さんも僕も、山菜を使うときは敢えてしっかりあく抜きをしません。えぐみを活かしつつおいしい料理をつくるのも今回のレッスンの大きなテーマです」(茂田)


▼忍舞さん:調理パート

ふきのとうは水洗いせず、気になる汚れを軽くふき取るだけでOK。粗めのみじん切りにし、油をひいたフライパンで味噌とみりん、酒とあわせてふきのとう味噌をつくります。グリルしたアスパラガスにかけてオリーブオイルを垂らせば、あっという間に「アスパラグリルのふきのとう味噌」のできあがり。

うどの魅力は根元から茎や皮、穂先までほとんど捨てずに食べられるところ。全体的に生えているうぶ毛も炒めてしまえば気にならなくなるので、面倒な下処理は不要。斜め切りにすることで歯切れが良く食べやすくなります。「うどと舞茸の味噌柚子胡椒マヨ」は、小学生のお子さんも好きで普段からよくつくっているレシピなのだとか。

「息子は市販のマヨネーズをあまり食べないんですけど、手づくりのヴィーガンマヨネーズはよく食べるんですよ。甘酒と塩麹とマスタードを混ぜて一度にたくさんつくっておいて、ストックしています。ちなみに今回の献立にはすべて、普段から私が使っている発酵調味料を取り入れています。これがひとつあるだけで料理の幅がぐんと広がるので便利ですし、いろいろなアレンジもできるのでおすすめです」(忍舞さん)

自宅では手づくりの発酵調味料を数十種類常備しているという忍舞さん。今回の献立にある「新玉ねぎと春キャベツの麹スープ」には、香味野菜(にんにく、しょうが、ねぎ)と塩麹を混ぜてつくった「中華麹」を選びました。どんな料理にも使える万能調味料です。

続いて「新じゃがとクレソンのスパイス和え」。じゃがいもは茹でずにせいろで蒸していきます。蒸すことで水溶性の栄養分も逃すことなく、ホクホクの食感に。知り合いの八百屋さんで購入したというフレッシュなクレソンは包丁を使わず手で千切ります。「茎の部分も刻んで食べたらおいしそう」と忍舞さん。

じゃがいもが蒸し上がったら塩麹とオリーブオイル、「Dish(es)」のミックススパイスを加えて和え、ピンクペッパーを散らします。

「お酒との相性も良いので大人はもちろん、子どもも喜んで食べてくれます。ミニトマトや茹でたタコを入れてアレンジしてもおいしいです」(忍舞さん)


ゲストの心を掴む「押し寿司」というおもてなし。


▼茂田:調理パート

まずは押し寿司のシャリをつくるところから。ごはんを炊く調理道具は直火可能なテーブルウエア「HEGE」。水分量がほどよくさらっと炊き上がるため、酢飯にはもってこいなのだとか。

「僕の場合、ここに寿司酢を混ぜて酢飯をつくるんですけど、つくってから片付ける行程までこの道具ひとつで完結させています。素材がアルミで熱伝導率が高いこともあり、約20分強で炊き上がります。まずは中火で沸騰するまで5分。沸騰したら弱火にして10分。さらに10分蒸らします。キッチンじゃなくテーブルの上で湯気を眺めながら、ごはんができるまで軽く1杯やるのもいい時間ですし、何人かで手巻き寿司をやるときなんかにもあると便利な道具です」(茂田)

ごはんが炊き上がるまでの時間を使って、2種の押し寿司の具材を仕込んでいきます。春は魚もおいしい季節。ニシンやメバル、サワラなどのほか、初物の代表格である初鰹もいわゆる「春告魚」の仲間です。鰹をはじめ赤身の魚はビタミンB6が豊富。ビタミンB6には血液をつくることを促す働きがあるので、女性にとっては大切な栄養素でもあります。

「『初鰹とせりの押し寿司』は、下準備として鰹に塩を振って水分を抜いておきます。次に、叩いたせりと一緒にしょうがと塩麹を混ぜた薬味ペーストを切り身に絡めて、具材と米を交互に押し枠に詰めていきます。『こごみと海老の押し寿司』は、色鮮やかな『黄身酢おぼろ』で春らしい見た目に。卵黄に米酢と砂糖と日本酒を混ぜて弱火にかけ、パラパラになるまで根気強く混ぜていきましょう」(茂田)


「おいしくて楽しい」が料理の原点。コラボレーション料理教室を終えて。

いずれもシンプルな調理工程の献立とあって、1時間ほどですべての料理ができあがり、その後は参加者の皆さんにお召し上がりいただきました。

最後はレッスンを終えた講師のおふたりに、料理との向き合い方や互いの価値観、食に対するアプローチなどについてお聞きしました。


□忍舞さん より

だれかと一緒にレッスンをするのは初めてだったので緊張しましたが、すごく楽しかったです。今回の企画は、茂田さんの「食べる美容」の料理教室に息子と参加させていただいたことや、その前から何度か会ってお話するなかで、勝手に似ている部分があるなと感じたことから始まったのがきっかけです。私は普段、電子レンジを使わないのですが、茂田さんとは調理道具の話でもだいぶ盛り上がりました。それにお互いお酒好きだという共通点も(笑)。

発酵に興味を持ち出したのは、味噌づくりがきっかけです。自分でつくるとこんなにおいしくて楽しいんだということを知って以来、どんどんハマっちゃいました。昔の人の知恵って本当にすごいですよね。発酵調味料をつくり始めたのは10年ぐらい前です。材料も少なくて混ぜて放って置くだけで良いなんて、ズボラな私には本当にありがたいなと。

SNSでいろんな発信をしていると、みなさんやっぱり食に興味があるんだなと思うことが多くあります。私は産後、体質が変わってお肉が食べられなくなったのですが、自分が実践している食事や料理の投稿をすると、ファッションに関する投稿よりも質問をいただく機会が増えるんです。色々試すなかで体調が改善したりすると健康オタクに拍車がかかり、これを誰かに伝えたいと思うようになりました。

6歳の息子は2歳の頃から私と一緒に畑に通っているんですけど、そのおかげで野菜が大好きです。本当においしい野菜には、味だけじゃない「おいしさ」があると思っています。おいしい野菜と発酵調味料があれば、料理は勝手においしくなるということも学びました。

最後にもうひとつ、私のレシピには分量がほとんどありません。調理の過程で自分が求める味にできれば、すべては良しです。人間の持つ本能的な感覚というか、自分が何をおいしいと感じるのかも大切だと思います。これからもみなさんと色んな体験を共有しながら、料理や食に向き合っていきたいと思います。


■茂田正和 より

今回の料理のテーマは「旬の山菜を手軽な発酵調味料でおいしく」というものでしたが、美容や健康面のキーワードは「抗酸化」でした。春先の不安定になりがちな体調や肌状態を整えるといったものです。

日本には四季があるので、旬のおいしい食材を知っていると料理が楽しくなるということや、意外と簡単においしくできるということをみなさんに伝えたいと思っていました。旬のものを食べることでその時期に必要な栄養を補うことができるので、結果的に効率も良いんですね。

忍舞さん自身はペスカタリアン(魚介を食べる菜食主義)ですが、そんな彼女が提案するプラントベースの料理は野菜だけでもじゅうぶんに満足感を得られるんです。やはり発酵調味料を使うことで、野菜という素材の表現の幅が広がっているのだろうと思います。

調理道具の話でいうと、僕自身も電子レンジを好んで使うことはしないけれど、それが良いとか悪いとかっていう話ではなくて、土鍋やせいろを使うと純粋に料理がおいしくできあがるからそっちを選ぶっていうシンプルな話なんです。何を持って便利かというのも基準は人それぞれ。この料理教室でも、まずは楽しみながら、自分の感覚を大切にするということだけでも持ち帰っていただけていたらうれしいですね。


PROFILE

忍舞

モデル

宮崎県出身。モデルとして活動しながら自身で発酵調味料をつくり、野菜と発酵をテーマにしたプラントベースの料理を研究し提案している。料理レッスンやワークショップのほか、セルフケアを中心としたアロマレッスンなども行う。


茂田正和

株式会社OSAJI 代表取締役 / OSAJIブランドディレクター

音楽業界での技術職を経て、2001年より化粧品開発者の道へ進み、皮膚科学研究者であった叔父に師事。2004年より曽祖父が創業したメッキ加工メーカー日東電化工業の化粧品事業として多数の化粧品を開発、健やかで美しい肌を育むには五感からのアプローチが重要と実感。2017年、スキンケアライフスタイルを提案するブランド『OSAJI(オサジ)』を創立しディレクターに就任。2021年にOSAJIの新店舗としてホームフレグランス調香専門店「kako-家香」(東京・蔵前)、2022年にはOSAJIkako、レストラン『enso』による複合ショップ(鎌倉・小町通り)をプロデュース。2023年、日東電化工業の技術を活かした器ブランド『HEGE』を手がける。著書『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)。202429日『食べる美容』(主婦と生活社)出版。
https://osaji.net/
https://shigetanoreizouko.com/


今回の料理レッスンを行ったのは…

〈 調理室 〉

「フォレストゲート代官山」内に位置する、企業やブランドをはじめ、居住者や一般の方も利用可能なキッチンを備えたイベントスペース。シェフズディナーや試食会、商品発表や展示会などのプレゼンテーションキッチンとしても活動を展開。

運営元の「日本食品総合研究所」は、食に関わる人やコミュニティ、企業や自治体をつなげるハブとして、プロジェクトベースで食にまつわる企画・開発・製造・提供のサイクルを循環させていくプラットフォーム。

Forestgate Daikanyama [MAIN棟]
東京都渋谷区代官山町2023号2F
https://nsk-office.com/laboratory


photo:Eisuke Komatsubara
text:Haruka Inoue

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