▼うっかり日焼け!その後に、美白美容液は使うべき?

「ちょっとそこまでのつもりで、すっぴんで出かけたら」「洗濯物を干す間だけだから、と思っていたら」。予想外の強い陽射しが照りつけ、気づけば肌が浅黒くなってしまった!そんな事態に陥ると、「美白化粧品を使わないとシミやくすみが残りそう…」と焦ってしまう方がこの時期は多いと思います。しかしながら、肌の機能が正常に働いていれば、美白化粧品の手助けは不要なのです。今回は、健やかな肌の機能をしっかり見つめるところから“美白ケアは本当に必要? ”に迫ります。


肌を守るべく生成されるメラニン。
メラニンを抑制すると肌はどうなる?

そもそも日焼けとは、紫外線を浴びた際の肌の防御反応の結果です。これ以上ダメージが深くならないよう、紫外線の浸透を遮断すべくメラニンの生成が増やされます。美白成分が配合された美白化粧品の多くは、このメラニンの生成プロセスを抑制すべくアプローチします。

つまり美白化粧品を使うことは、自然の摂理という観点からすると、健やかな肌に備わっている防御反応を妨げてしまうことになるのです。そのため美白化粧品を使い続けると、肌にもともと備わっている防御力が低下し、長期的には逆に老化しやすい弱い肌になってしまうというリスクがあります。


弱酸性の肌環境を保つことで、メラニンをきちんと排出できる肌へ。

日焼けをして肌が浅黒くなるのは、通常より多く生成されたメラニンが肌表面に留まっている間だけです。子供の頃は日焼けをしてもあっという間に、もとの明るい肌に戻ったように、できたメラニンが古い角質とともにきちん排出されれば、シミやくすみを残すことはありません。

肌の健やかさを保ち、なおかつ透明感や明るさをキープするために本当に大切なのは、肌のターンオーバーを整えて、メラニンをきちんと排出できる肌状態を保つことです。そのためには、実は肌が弱酸性に保たれていることが必須条件といえます。というのも、弱酸性の環境下で働く酵素によって古い角質が脱落し、新しい角質が下から上がってくるからです。


汗とのつき合い方を見直して、日中もつねに肌を弱酸性に。


この点から、湿度の高い梅雨から夏は汗との付き合い方がポイントになります。汗は、出た瞬間は乳酸を含むので弱酸性なのですが、肌表面に残ると汗に含まれる尿素がウレアーゼという酵素に分解され、アンモニアに変化します。このアンモニアはアルカリ性なので、肌環境は中性に傾いて弱酸性の状態を保てなくなるのです。こうなるとターンオーバーのリズムが乱れ、古い角質は肌表面に残りやすくなり、肌荒れも起こりやすくなります。

クリアな肌を保つための第一歩は、余分な汗を肌に残さないこと。すぐにハンカチでふき取り、弱酸性に肌が整う化粧水をミスト容器などで持ち歩いてシュッとしてあげることで、肌を弱酸性にリセットするようにしましょう。

スキンケアというと、一般的には汚れを落とす洗浄、潤いを与える保湿、といったことを真っ先に思い浮かべると思います。しかし、肌が健康的に機能するためにもっとも重要な要素である“弱酸性に保つ”こともまた、スキンケアの重要な役割のひとつなのです。

夏場はベタつくのがイヤでどうしても乳液やクリームは使えない、というのであればそれでも構いません。ただ、化粧水で整えて肌表面を弱酸性に保つことだけは、メラニンを排出できる肌でいるために最低限すべきケアといえます。

朝のスキンケアは、日焼け止めまでを必ずセットに。

人の体には、自然の摂理によってリセットされるしくみが備わっています。「美白化粧品は肌が白くなるもの」という印象を抱かれがちですが、実際はできたメラニンを完全に無色化できるわけではありません。

美白とは、細胞レベルにまで働きかけてメラニンの生成を食い止めることです。それは一方で「メラニンをつくって肌を保護し、役目が終わったら排出する」という肌本来の機能を乱してしまうという、副作用的な状況を招きかねません。

統計的なデータからも、メラニンの量がもともと少ない欧米人のほうが皮膚ガン発症のリスクが高く、老化もしやすいことは明らかです。肌の白いは七難隠すという言葉は古くからありますが、メラニンを目の仇にして生成を止めようとするのは、ウェルネスの視点からすると時代遅れなアプローチといえるのかもしれません。

肌のターンオーバーがスムーズに行われるよう促しながら、毎日の日焼け止めを習慣にして紫外線の影響をカットすれば、重大なメラニンの過剰生成が起きることはありません。

肌をつねに弱酸性に保つこと、朝のスキンケアは日焼け止めを塗るところまでをセットにして終えること。この2つを欠かさず徹底するだけ。健康体の大人であれば、とくに美白化粧品を投入せずともシミやくすみを残すことなく、明るい肌をキープできることを、ぜひたくさんの方に知っていただきたいです。


※こちらは2022年に収録した、OSAJIディレクター 茂田正和による皮膚科学に基づいた解説のアーカイブです。


PROFILE

茂田正和

株式会社OSAJI 代表取締役 / OSAJIブランドディレクター

音楽業界での技術職を経て、2001年より化粧品開発者の道へ進み、皮膚科学研究者であった叔父に師事。2004年より曽祖父が創業したメッキ加工メーカー日東電化工業の化粧品事業として多数の化粧品を開発、健やかで美しい肌を育むには五感からのアプローチが重要と実感。2017年、スキンケアライフスタイルを提案するブランド『OSAJI』を創立しディレクターに就任。2021年にOSAJIの新店舗としてホームフレグランス調香専門店「kako-家香-」(東京・蔵前)、2022年にはOSAJI、kako、レストラン『enso』による複合ショップ(鎌倉・小町通り)をプロデュース。2023年、日東電化工業の技術を活かした器ブランド『HEGE』を手がける。著書『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)。2024年2月9日『食べる美容』(主婦と生活社)出版。


interview : Kumiko Ishizuka

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