マスク解禁後に気になった、肌のたるみ感  #良質な発汗とビタミンの充実 |第2回

「美しさ」は、誰かと比べるものでもなければ、競うものでもありません。けれど、何が何でも今の在るがままの自分を認めなくても良い。

あなたが自分の美しさを発見していく時に寄り添うことができるのが、「美容」という術であり、「皮膚科学」という分野です。

誰よりも、自分が自分の美しさを見つけられるように。愛でられるように。

今回からは、OSAJIディレクターの茂田による、実際のお悩み肌処方をお届けします。


第2回目のお悩みはこちら。

◆Question

相談者/  Narumiさん 

「マスクを外すようになり、口元のもったり感、たるみ感が気になるように。普段心がけるべきケアはありますか?」

33歳/フリーランス お仕事はパソコンワークが中心。目の疲れからくる肩こり、そのほか腰痛や冷えの悩みも。カサつきやつっぱり感が気になる乾燥肌。食生活はフルーツや甘いものがやや多め。週1でダンスの運動習慣あり。

◆Answer

茂田

「まず口元のもったり感について。これは、加齢というよりも肌の乾燥に依るところが大きいと思います。マスクをつけているとずっと内側の湿度が高く蒸れた状態になりますよね。そうすると、マスクを外した時にこもっていた水分がわっと逃げて、肌の水分量が急激に下がります。

この状況が2年以上続いていたので、もともと乾燥傾向にあるNarumiさんのお顔の肌の中でも、マスク着用部分はいっそう乾燥するようになったはず。

そもそもマスク内って、皮膚常在菌の観点からすると衛生的とはいえなくて。蒸れてpHがアルカリ性に傾くことで悪玉菌が増えやすくなり、美肌菌といわれる肌を健やかに保つ善玉菌が減ってしまうんです。

急激な乾燥と常在菌バランスの崩れ、この2点から肌のバリア機能が著しく下ると、当然ですが肌のなめらかさやハリにも影響します。これがもったり感の原因。

また、Narumiさんは目元の乾燥などお顔全体のカサつきやハリ不足も感じているようなので、やはりアウターケアとインナーケア、両面からバリア機能がしっかり働く肌に導くケアが必要です。

①アウターケア ⇨皮膚常在菌のバランスを整え、紫外線ケアを徹底。

②インナーケア ⇨ビタミンBとビタミンCを日々多めに摂取する。

それぞれ詳しくお話ししますね。

①アウターケア ⇨皮膚常在菌のバランスを整え、紫外線ケアを徹底。

①のアウターケアについては、

乾燥しにくい健やかな肌とは、バリア機能がしっかりした自らうるおいだす肌のことです。保湿化粧品を使っていても肌の乾燥を感じる場合、まずは皮膚常在菌バランスを整えるところからバリア機能にアプローチしましょう。

皮膚常在菌は、腸内細菌と同じで善玉菌、悪玉菌、日和見菌と大きく3種類に分類されます。善玉菌である表皮ブドウ球菌は“美肌菌”とも呼ばれ、皮脂と汗をエサに肌のうるおいを保つグリセリンと、肌のpHを健やかな弱酸性に保つのに必要な脂肪酸をつくってくれます。

つまり皮膚常在菌のバランスが美肌菌優位に保たれていて、悪玉菌が悪さをしなければ、本来は肌に何も塗らずとも調子良くいられるのです。ただ、現代環境は空気の汚染や紫外線の増加など化粧品を使っての洗浄や保護も必要で、また女性は日常的にメイクもするのでクレンジングの使用も避けられません。

日焼け止めやメイクをクレンジングや洗顔料で落とす時、皮膚常在菌もいったん流れ落ちてしまいます。そこから元の状態に戻るには約12時間近くかかるといわれています。

ところが現代の女性は、夜にメイクを落として保湿化粧品をつけても、6〜7時間くらいして朝になったらまた洗顔料を使う方が多いですよね。そうなると皮膚常在菌のバランスがベストな状態に整いにくくなり、肌は自らうるおいを作り出せず、pHはアルカリ性に寄って肌荒れが起こりやすくなります。

きちんと保湿ケアしているのにカサつきやつっぱり感を感じる肌状態の人は、まずクレンジングと洗顔の負担を軽減すると肌が変わってくるはずです。

そしてNarumiさんは日光アレルギーもあるとのこと。これは紫外線による光老化の影響を受けやすいともいえるので、普段から紫外線対策を徹底することも重要です。

●対処法/日常使いのクレンジングと日焼け止めは肌にやさしいものを選ぶ。

Narumiさんは、朝は水洗顔のみということで、油っぽさによるトラブルはないようですしこれは皮膚常在菌にとって良いアプローチと思います。

メイクは毎日するわけではないんですね。であれば、メイクをした日の夜のクレンジングは、ウォータープルーフのものを使っているとかでない限り、そこまで洗浄力が強いものを使う必要はないと思います。肌の乾燥を進行させないためには、体温以下のぬるま湯ですすぐことも重要です。

紫外線ケアについては、Narumiさんは色白肌、つまり紫外線が肌の奥まで浸透してダメージを与えないよう遮光カーテンの役割を果たしてくれるメラニン色素がかなり少ないタイプ。

ゆえに、日光アレルギーによる炎症を防ぐことはもちろん、肌のハリを支える真皮の光老化を進行させないためにも、毎日の日焼け止めを習慣化しましょう。ただ気をつけて欲しいのは、バリア機能が低下した肌に強い日焼け止めを使うとトラブルを起こしやすいこと。

日焼け止めは、肌への負担が少ない処方のものを選ぶ、パッチテストをしてから使うといったことも忘れずに。また、インナーケアをしっかりすると肌に負担のかかりやすい高SPFの日焼け止めに頼らずとも、肌へのダメージを軽減することができるので次でお話しますね。

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②インナーケア ⇨ビタミンBとビタミンCを日々多めに摂る心がけを。

まずインナーケアの大前提、栄養アプローチの基盤となるタンパク質をきちんと摂れているか確認してみましょう。自分にとって必要な量のタンパク質の摂り方ついては、第1回でお伝えしたのでチェックしてみてください。

その上で、今回のお悩みに有効なインナーケアは、つねにビタミンBやビタミンCが体内に十分ある状態を保つことです。

ビタミンB群は、タンパク質を熱エネルギーに変換する時に必要な補酵素で、不足すると体が熱量不足、つまり冷えやすくなります。Narumiさんは甘いものがお好きということですが、糖質や脂質の代謝にもビタミンB群は必須なんです。

口内炎もできやすいとお聞きしましたが、これは粘膜を守る働きのあるビタミンB2を摂ることで緩和されるかもしれません。ビタミンCは、紫外線を浴びた時に発生する活性酸素を捉えて無害化してくれる働きがあります。Narumiさんはフルーツがお好きということで、日常的にビタミン摂取できている感じがあるかもしれないのですが、ビタミンBやビタミンCは水溶性のビタミン。油溶性ビタミンのように体内に蓄積することができず、頻繁に多めに摂っていないとなかなか肌のケアにまで行き渡らないのが実情です。

残念ながら現代の野菜は、数十年前と比べると含まれる栄養素がかなり低下しています。なので、肌にしっかり結果を出すにはサプリメントの活用がおすすめです。

●対処法/サプリを活用してビタミンBを絶やさない、ビタミンCは数倍量を。

無理のない範囲でバランスの良い食事を心がけた上で、ビタミンB群とビタミンCのサプリメントを取り入れてみてください。

ビタミンBのサプリメントを摂るようになって、体が冷えにくくなった、口内炎を繰り返しにくくなったと実感する人はとても多いです。それからNarumiさんはダンスの運動習慣もあるようですが、冷えのお悩みもあるとのこと。ぜひビタミンB摂取と併せてサウナや岩盤浴で汗をかく習慣もプラスしてみてください。

週1でサウナや岩盤浴に行って、ゆったりと腹式呼吸をして過ごせば、じわじわと代謝がアップ、そして美肌菌が喜ぶ良い汗をかけるようになります。

またPCワークが多く、肩コリや腰痛、眼の疲れなどを感じているということは、体内の活性酸素量がやや多そうなので、紫外線対策としてだけでなくビタミンCの摂取も強化しておきたいですね。

ビタミンCの適量は1日当たり1000mgとされていますが、朝3000mg/晩3000mg、あるいは朝2000mg/昼2000mg/晩2000mgと、通常の6倍くらい摂ってもOK。

というのも水溶性ビタミンは、摂り過ぎたとしても不要な分はすぐ尿を通じて体の外に出てしまうので。むしろ、おしっこがいつもより黄色くなったら十分な量のビタミンCを摂れているサインといえます。

僕自身、最近はビタミンCを日に6000mgほど摂っていますが、以前より風邪をひきにくくなり、仕事が忙しい時も疲れにくくなったのでぜひ試してみて欲しいです。

マスクをしなくなって、一気に肌の衰えが気になったというNarumiさん。

今回の相談は、これまでなんとなく感じていた肌や体の不調が、食やライフスタイルとどのように関係しているかを捉え直すターニングポイントになったかと思います。

美容でも健康でも、1つの方法でなんとかしようとしないこと。

肌の機能を知って、心と体の声に耳を澄まし、いろいろな方向からアプローチしてみては、肌の経過を観察することがトラブルや老化の兆しを早期に防ぐコツです。


茂田正和

OSAJI ディレクター。音楽業界での技術職を経て、2002年より化粧品開発者の道へ。皮膚科学研究者であった叔父に 師事し、敏感肌でも安心して使える化粧品づくりを追究する中で、感性を育む五感からのアプ ローチの重要性を実感。2017年、スキンケアライフスタイルブランド『OSAJI』を創立しディレクター に就任。2021年にOSAJI店舗に併設のホームフレグランス調香専門店「kako-家香-」(東京・蔵前) が好評を博し、2022年には香りや食から心身の調律を目指す、OSAJI、kako、レストラン『enso』に よる複合ショップ(鎌倉・小町通り)をプロデュース。2023年は、日東電化工業の技術を活かした器 ブランド『HEGE』と、HEGEで旬の食材や粥をサーブするレストラン『HENGEN』(東京・北上野)を 手がけた。著書『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)。