▼筆とスポンジ | 第4回
OSAJI メイクアップコレクション ディレクターのAYANAです。このコラムでは、私の創造性や価値観を支え、育ててくれた本や道具を取り上げてご紹介しながら、OSAJIというブランドを通して伝えていきたい美意識のようなものについて、お話できたらと思っています。
ビューティライター
AYANA
第4回
筆とスポンジ

「素敵な靴は持ち主を素敵な世界に連れて行ってくれる」という諺がある。私の場合、靴にはそこまで思い入れはないものの(よく靴ずれしてしまうので、履きやすさのほうが大事)、自分ひとりでは行けない場所に連れて行ってくれる道具ってあるよね、という感覚はわかる。
化粧においては、筆とスポンジがそれにあたる。
たとえばアイメイクのとき、私には3種類の筆が欠かせない。先端が丸型になっている平筆、かなり小さな平筆、毛足がそこまで長くないラウンド型の筆。特に先端が丸のものがないと途方に暮れる。これはアイホール全体に色を乗せることも、グラデーションを作ることも、ラインを描くこともすべてできる優れもの。シュウ ウエムラの10番を、もう30年ほど使っている。
リップメイクはそれほどでもないが、眉もチークもハイライトも、愛用のブラシがあって、ブラシなしにはうまく仕上げられない。毛質でも驚くほど仕上がりが異なる。最近は人工毛に優秀なものも多いけれども、私は動物毛のブラシに愛着がある。

ファンデーションをはじめとするベースメイクにおいては、ブラシもいいけれど、なんといってもスポンジが好きだ。肌あたりがよく小回りが効くものがよく、シュウ ウエムラの五角スポンジと、エスティ ローダーのスーパープロフェッショナルメイクアップスポンジは、ストックを切らさない。今ちょうど手元にないけれど、OSAJIの『デュアルレイヤー フィット スポンジ』ももちろん素晴らしいです。
ストロークとタッピングを使い分ければ、気持ちよさを感じながらあっという間に肌になじませることができる。クリームチークなどもスポンジでつける。
メイクアップには指をメインに使うという方もいらっしゃると思う。OSAJIも指で使う楽しさを推奨するブランドだし、異論はまったくない。たまに指を駆使して楽しむこともあるのだけれども、気づけばブラシとスポンジを手にしてしまう。
質のいい道具を操縦して肌に触れる感覚が好きなんだと思う。質のいい道具にはプロの魂のようなものが宿っており、操縦する人(私)の意図がそれを動かす。理想の仕上がりを思い描くのは意図だけれど、実際に肌に触れているのはプロの手、みたいな感覚がある。行き先だけ告げて、プロが操縦する飛行機に乗せてもらうような感じだ。その実感があるから、「素敵な靴は持ち主を素敵な世界に連れて行ってくれる」という諺についても、共感できるし理解できる。
余談だけれども、今年から水彩画をはじめたいと思い、先日筆を買った。メイクアップで使うのと同じような、長めの柄で動物毛のブラシ。一見慣れ親しんでいる風貌なのだが、しかし、まったくもってうまく使いこなせる気がしない。水彩は未踏の世界であり、私にはまだ明確な意図がない。だから道具も私を素敵なところに連れていきようがない、ということなのかな、なんて思った。

PROFILE
AYANA
OSAJI メイクアップコレクションディレクター
コラム、エッセイ、インタビュー、ブランドカタログなど広く執筆し、化粧品メーカー企画開発職の経験を活かしてブランディングや商品開発にも関わるビューティライター。著書にエッセイ集『仕事美辞』『「美しい」のものさし』(双葉社)がある。2025年よりOSAJI協賛のもとでPodcast「にあう色が知りたい」をスタート。
https://ayana.tokyo/
Podcast「にあう色が知りたい」
連載タイトル
『需要・受容・樹葉』
3つの「じゅよう」を並べました。
需要:求めること、ほしいもの。
受容:受け入れること、肯定すること。
樹葉:幹の先、枝の先に生まれる葉。表現・創造されたものたち。
私たちは人生を通して、3つの「じゅよう」を味わい、たのしむのではないでしょうか。求めることをたのしみ、受け入れ認め合うことをたのしみ、そして自分や他者の表現をたのしむ。私個人の「じゅよう」が、誰かの「じゅよう」に繋がり、重なり、変容し、また別の「じゅよう」が生まれていく、そんな連鎖を夢想しながら、文章を綴っていけたらと思います。