▼世界のマーケット | 第3回
ブランドディレクターという僕の仕事。商品のアイディアを出してコンセプトを決め、ネーミング、容器選び、デザイン、処方開発をそれぞれのチームと進めていきます。ブランド全体の世界観やビジョンを決めることもしますし、お客さまとのコミュニケーションの方法も考えます。
スタッフからは「アイディアは枯渇しないのですか?」と時々聞かれますが、これが不思議と尽きないのです。僕自身もよくわかっていない、そんなアイディアの根源をお届けできたらと思います。たわいもない話ですが、お付き合いいただけたら幸いです。
OSAJI ブランドディレクター
茂田正和
第3回
世界のマーケット
僕は海外出張に行くと、空いた時間を見つけては、必ずその地域のマーケットに行くようにしてます。市場や屋外のマルシェ、スーパーマーケットまで様々なマーケットで何かを買うあてもなくカメラを持ってふらふらするのです。そこでは、その場所の物価や、食文化、生活様式など色々な情報を得ることができて、その場所を深く理解できる気がしてとても楽しい時間です。
暑い地域はマーケットも色とりどりで、見たこともないハーブが並んでいますし、寒い地域になると、生の食材というよりは、乾燥や塩蔵など保存食の状態のものが多くなります。海鮮類などは、日本にある食材でも見た目や大きさが違ったり、日本であまり人気のない食材が大量に売られていたりと、刺激的な情報が次々と入ってきます。いわゆるお惣菜コーナーのような場所では、僕のライフワークである料理のヒントの宝庫で、どこからともなく漂う香りはフレグランスの調香のアイディアになったりもします。
そして、海外のマーケットと日本を対比して見てみると、良くも悪くも日本を客観的に見ることもできます。やはり、日本ほど食材が丁寧に個包装されている国はなく、日本の過剰包装感は否めません。そして、世界の多くでは必要なものを必要な分だけ買えるのは魅力的です。一方で日本ほど衛生的に食材が扱われる国は少なく、生で食せる食材が多いことも貴重なことだと思います。こういうことから、日本の繊細な料理や繊細な香りの表現が可能になるのだとも感じます。
未だ見たことのない、世界のマーケットを、これからも見ることが楽しみです。
PROFILE
茂田正和
株式会社OSAJI 代表取締役 / OSAJIブランドディレクター
音楽業界での技術職を経て、2001年より化粧品開発者の道へ進み、皮膚科学研究者であった叔父に師事。2004年より曽祖父が創業したメッキ加工メーカー日東電化工業の化粧品事業として多数の化粧品を開発、健やかで美しい肌を育むには五感からのアプローチが重要と実感。2017年、スキンケアライフスタイルを提案するブランド『OSAJI(オサジ)』を創立しディレクターに就任。2021年にOSAJIの新店舗としてホームフレグランス調香専門店「kako-家香–」(東京・蔵前)、2022年にはOSAJI、kako、レストラン『enso』による複合ショップ(鎌倉・小町通り)をプロデュース。2023年、日東電化工業の技術を活かした器ブランド『HEGE』を手がける。著書『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)。2024年2月9日『食べる美容』(主婦と生活社)出版。
https://shigetanoreizouko.com/