植物がくれるもの | 第3回

OSAJIでは主にパッケージや、お店で使われている紙袋やパンフレット、HPやSNSに掲載するイメージのディレクションなど、ブランドにまつわるデザインの仕事をしています。

デザインを通して気づいたこと、感じたこと。私を私たらしめるモノやできごとを、記憶をたどりながら綴っていきます。

自分の考えや気持ちを自分以外の方に届けることは、楽しみでもあり気恥ずかしさもありますが、お付き合いください。

OSAJI デザイナー
石井このみ


第3回
植物がくれるもの

私は、毎日同じことを繰り返すのは苦手だ。
できることなら、思いつくままに日々を過ごしたい。そんな私でもルーティンと呼べることがいくつかある。
その一つが、観葉植物を育てること。

毎朝カーテンを開けて、天気が良ければ窓を開けて空気を入れ替える。
葉水をし、土が乾いていたら水をあげる。
枯れた葉はトリミングする。

今、私の部屋では以下の植物たちを育てている。

・エバーフレッシュ
・パキラ
・フィカスティネケ
・ペペロミア
・ベンジャミン
・ローズマリー
・シェフレラ
・バジル
・セダム
・アイビー

あとは名前を忘れてしまった植物が2鉢ほど。庭のビオトープにもいくつか水生植物が植っている。少しずつ増えてきたが、どれも観葉植物の中では容易に育てることのできる種類だ。

小さい頃育った家には庭があり、2階の窓に届くほどの木々と、その地面の隙間を縫うように植物が茂っていた。夏になると朝顔が咲き、摘んだ花を絞って色水にして遊んでいた。

緑から赤へと変化する紅葉の葉は、綺麗な形のものを選んで押し花にしたり。庭に生えている植物と、近くの川沿いや森にある植物は違っていて、それぞれの違いを観察するのも好きだった。思い返すと、割と緑に近い生活を送っていたのだと思う。

大学に入学して一人暮らしを始めると、室内で育てられる植物を置いた。もちろん失敗することはあったが、適度に面倒を見て、適度に忘れるくらいの方が、不思議といきいき育っていた。気づくと小さな葉が生まれ始めていて、いつの間にかその葉は大きく広がっている。蕾だった花が咲き、種になっている。毎日同じ日々を過ごしているように感じても、私のそばにある植物たちは、姿を変化させながら生きている。面白いし、飽きない。

植物が育つ環境であることは、人も過ごしやすい環境であるように思う。陽の光が入り、空気が流れ、適度な湿度と気温を保つこと。部屋の中にいる植物のためにやっていることも、実は自分の健康につながっているのかも、と思ったりする。枯れたら寂しいし、新しい芽を発見すると嬉しい。

また、絵を描くときも、様々な緑が生い茂っているような風景を選ぶことが多かった。同じ緑なのに、光が当たったり形が違ったり、質感も異なる。けれど、遠くから見ると一つの大きな塊に見えたり、表情がとても豊かだ。その風景を、いろんな絵の具を混ぜて重ねながらキャンバスに落とし込んでいく。

みたままでなくてもいい。
形が正確でなくてもいい。

生命力を感じる色の重なりに惹かれる、その心の動きをうつしていくような作業。それも好きだった。

自ら植物を育てることが苦手な人でも、ぜひ、毎日通る道の木々や花に目を向けてみてほしい。

手入れされた街路樹は、毎年いろんな場所から枝を伸ばし木漏れ日を作る。紫陽花や金木犀などの花々は、季節の変化を知らせてくれる。心忙しなく生きている私たちとは、違う時間軸が流れているように感じるかもしれない。思考が巡って絡まりそうな時、ふと緑に目を向けると、自然とほどけていく感覚になる。植物は何も語りかけてはこない。けれど、確かに日常にそっと寄り添い、豊かなものにしてくれる。


石井このみ
OSAJI デザイナー

多摩美術大学グラフィックデザイン学科にてグラフィックデザインやパッケージデザインについて学んだのちに、2018年より「OSAJI」に入社。「OSAJI」のパッケージや販促物などクリエイティブ全般にまつわるデザイン業務のほか、フレグランスアイテムなどのコピーライティングも手がける。

Instagram: @shiii__mi


STAFF DIALOG
OSAJIの美意識とクリエイティブを巡るダイアローグ。

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