▼日本の美意識を改めて考える | 第9回
ブランドディレクターという僕の仕事。商品のアイディアを出してコンセプトを決め、ネーミング、容器選び、デザイン、処方開発をそれぞれのチームと進めていきます。ブランド全体の世界観やビジョンを決めることもしますし、お客さまとのコミュニケーションの方法も考えます。
スタッフからは「アイディアは枯渇しないのですか?」と時々聞かれますが、これが不思議と尽きないのです。僕自身もよくわかっていない、そんなアイディアの根源をお届けできたらと思います。たわいもない話ですが、お付き合いいただけたら幸いです。
OSAJI ブランドディレクター
茂田正和
第9回
日本の美意識を改めて考える

「Japandi(ジャパンディ)」という言葉をご存知でしょうか?
これは”Japanese”とスカンジナビアの略称”Scandi”を組み合わせた造語です。
インテリアやデザインに詳しい方には、すでに馴染み深い言葉かもしれませんが、今、このスタイルが世界中で注目を集めています。日本の「わびさび」が持つ静寂や枯れた質感と、北欧の「ヒュッゲ」が大切にする温もりや心地よい曲線。一見すると対照的にも思える二つの美意識が混ざり合い、視覚的なノイズを削ぎ落としたミニマリズムが、現代人の心に平穏を取り戻す鍵となっているのです。
では、なぜ真逆のようにも思える二つの美意識が、融合することになったのでしょうか。 そこには、日本と北欧の思想に流れる、興味深い共通点があります。

古来、日本人は「八百万の神」として万物に神が宿ると信じてきました。一方で北欧の先住民族が育んできた「サーミ文化」においても、独特な形の岩や木に神が宿ると考えられ、トナカイの狩りにおいても、その命を自然のサイクルへと還す畏敬の念が根付いています。
この自然に対する謙虚な姿勢が、双方の創作のベースにあるのだと思います。素材を活かし、「自然の揺らぎ」を大切にする。工業生産の視点で見れば不完全とも言えるその表現を、クラフトマンシップとして慈しむ精神。そして、使い続けることで美しさが増す「用の美」。これらは、現代でいうサスティナビリティの本質とも結びついています。
経済成長や工業化の時代を経て、今、私たちは人類として何を大切にすべきなのか。本能としてどのような在り方に心地よさを感じるのか。ジャパンディという潮流は、そうした問いへのひとつの答えを示しているのではないでしょうか。
デザインにおいて恣意的に形を作るのではなく、そこに宿る素材や歴史の声に耳を傾ける。その延長線上に、新たな時代の個性という「点」を打つ。それこそが、今求められている思想ではないかと思うのです。

PROFILE
茂田正和
株式会社OSAJI 代表取締役 / OSAJIブランドディレクター
音楽業界での技術職を経て、2001年より化粧品開発者の道へ進み、皮膚科学研究者であった叔父に師事。2004年より曽祖父が創業したメッキ加工メーカー日東電化工業の化粧品事業として多数の化粧品を開発、健やかで美しい肌を育むには五感からのアプローチが重要と実感。2017年、スキンケアライフスタイルを提案するブランド『OSAJI(オサジ)』を創立しディレクターに就任。2021年にOSAJIの新店舗としてホームフレグランス調香専門店「kako-家香–」(東京・蔵前)、2022年にはOSAJI、kako、レストラン『enso』による複合ショップ(鎌倉・小町通り)をプロデュース。2023年、日東電化工業の技術を活かした器ブランド『HEGE』を手がける。著書『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)。2024年2月9日『食べる美容』(主婦と生活社)出版。
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