2024.4.26

Sanu Inc. ファウンダー/ブランド ディレクター 本間貴裕さん|SPECIAL INTERVIEW

Sanu Inc. ファウンダー/ブランド ディレクター 本間貴裕さん

都心から気軽に自然に還る。画期的な宿泊サービスの着想。

都心から通って自然の中でのリトリートを楽しめる、セカンドホーム・サブスクリプションサービス「SANU 2nd Home(サヌ セカンドホーム)」。2021年秋にスタート、都心から数時間圏内に続々とオープンする中、今回は2022年3月に仲間入りした山中湖1stのSANU CABINを往訪。サービスの独自性やしつらえのこだわりについて、創業者でブランドディレクターの本間貴裕さんとお話させていただきました。

※2022年に公開した記事の再掲載となります。


サブスク型サービスだから
手が届きやすいセカンドホーム

セカンドホーム・サブスクリプションサービス「SANU 2nd Home」は、初期費用0円で簡単にスマートフォン一つでサブスク登録から予約までを完結できます(現時点では会員枠満員のため、先着順で会員登録できるウェイティング登録を受付中)。現時点で白樺湖1st、八ヶ岳1st、山中湖1stが利用でき、さらに北軽井沢1st、河口湖1st、白樺湖2ndのオープンも予定しており、今夏までに計7拠点に50棟のSANU CABINが誕生。月額5.5万円でこれらの自然豊かな拠点の中から好きなところを選択して滞在できるシステムです。

「僕自身、都会で働きながら休みの日にはスノーボードやサーフィンなど自然の中に遊びに行くという生活を続けてきました。それが2020年の非常事態宣言下に千葉県の海の近くに小さな家を借りて生活を営んでみた時、これだと思いました。もともと大学在学中から、社会人になったら週5日間は我慢して仕事して、休日2日間でそのストレスを発散する、という働き方はしたくないなと思っていて。これからは、非日常を味わうために宿をとって自然の中に入っていくのではなく、“日常の延長として自然を味わえるもう一つの家を持つ”というサービスを形にしたいと思いました」

自然の中でリフレッシュする機会がもっと頻繁に欲しいけれど、別荘を持つなんて夢のまた夢…と、諦めてしまっていた人にとって“これなら手が届きそう”と思わせてくれる朗報的サービス。その源には、本間さんの利用者の立場に立った目線や“それをやってみたい=仕事にしたい”という純粋な信条がありました。

地球が回復する未来を目指して
環境に配慮した建て方

「SANU 2nd Home」の画期的なサービスの在り方もさることながら、自然を愛するチームが手がけるからこそSANU CABINの開発システムは徹底して環境に配慮されています。

「すべてのSANU CABINは国産木材100%で、『高床式基礎杭工法』という土壌に杭を立ててその上に建物を建てる方法で建てられています。この方法だと、土地の水の流れや風の流れを止めることがなく、土壌へのダメージも最小限に留められます。建物としての役目を終えた時の解体用設計図もあって、環境に負荷をかけずに責任を持って撤去できます。釘や接着剤の利用をできる限り減らしているので、解体後にも使用していた木材を再利用できるサーキュラー型建築となっています。意外に知られていないのですが、使用している杉の木は樹齢50年を過ぎるとCO2の吸収量が少なくなります。私たちは150本の成長した杉の木を使用してSANU CABINを建てたら、同じ本数を植樹してよりCO2を多く取り込む若い杉の木を育てる計画を立てています。そうすると、SANU CABINが増えれば増えるほど、CO2の固定化*を推進できるというわけです」

*CO2の固定化(Carbon Fixation)
大気中の二酸化炭素を、植物や微生物が行っている光合成によって炭水化物に代え、生物躯体として固定させること。近年、人工的な二酸化炭素固定技術の開発も行われているが、現在のところ光合成より効率的なCO2固定化技術は存在しない。

SANU CABINのしつらえは
“帰ってきた感”を大切に。

玄関から入ってすぐに自然の景観を一望できる大きな窓は、青森にある木製サッシの会社、日本の窓(にっぽんのまど)に特注した断熱性の高い二重構造。誰でも扱いやすい木質ペレット(間伐材や端材を砕いて圧縮した新燃料)を燃やすストーブで、室内が十分に温まるようになっています。キッチンは通常より大きめに設計されており、照明は奈良に拠点を置くNEW LIGHT POTTERYがSANUのためにつくったオリジナル。テーブルウェアやカトラリーはもちろん、ドリッパーとともにONIBUS COFFEEの珈琲豆や調味料一式が備え付けられている点にも、きめ細やかな心配りを感じます。

「SANU CABINは、どこの拠点でも基本的に同じ造りになっています。自然の中にもう一つの家を持ち、“より良い日常の延長をつくる”がコンセプトなので“帰ってきたな”と感じられる安心感を提供したかったんです。空間デザインについては、面積よりも体積が重要だと僕は思っているので、施工パートナーのADX代表 安齋好太郎さんにお話して光の入り方や天井の高さにこだわって設計してもらいました。ベッドリネンは、sinso(シンソー)というブランドのものです。山梨で綿を打ち直して長く使い続けるロングライフな布団をつくっていて、このコットンのシーツはあえて洗いざらしで使う提案です。ホテルのベッドリネンはアイロンがピシッとかかっているのが普通ですが、このリネンの魅力はお家のリラックス感というか。最初にこのベッドで寝てみた時、あまりにもぐっすり眠れてちょっと驚いたくらいです」

スピーカーやステーショナリーも
長く使える良質なものを

本間さんのワーケーションの経験をもとに設けられたワークスペースには、リサイクル・アルミニウムで作られたGenelecのRAWスピーカーを設置。SANU CABINの独特な壁の曲線は、窓を開けた時に自然の音をより良く取り入れるための構造でもあるのだそう。また、ステーショナリーは蔵前にある「kakimori(カキモリ)」のインクとつけペンが用意されていました。

「自然に触れて心に余裕が生まれたら、普段は書かない手紙をインクでゆったり書いてみるのもおすすめです。ここに置くものはどれも、長く使い続けていける良質なものです」

今後さらに拠点が増えていく「SANU 2nd Home」。ランドスケープの選択肢が拡大していく一方で、訪れた先にはつねに変わらない“安らぎ”がある。その新しいバランス感覚、物選びのセンスまで学べそうなこのサービスから今後も目が離せません。

「SANU 2nd Home」設計・施工パートナー 株式会社ADX 代表 安齋好太郎さん×OSAJI ブランドディレクター 茂田正和

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