ひね生姜と新生姜であそぶ|第7回

OSAJI JOURNALでは、「朝夕」という屋号で料理を探求しているりえさんに、月に1度、その時の探求結果を発表してもらう場を設けました。その名も『お料理あそび』。

野菜や野草や、季節の香り。軽やかに地球の素材を楽しむりえさんの、その旅路をお裾分けします。


朝夕の松井理恵です。

日々、素材やお料理を探求し、お料理教室をしたり、ときどきお料理を振る舞ったりしています。

第7回目となる11月のテーマは「ひね生姜と新生姜」

少し地味なテーマですが、今回は、秋冬の滋養にぴったりの「生姜」についてお届けします。

Tips1/生姜のキホン

私のお料理教室で大切にしているのは、「土台」と「展開」。

まず土台がしっかりとあることで、展開=あそび部分が、豊かに広がってくると思っています。

今回も、まずは、生姜のキホンからお伝えしたいと思います。

どの食材もそうですが、生姜もとっても奥深いです。

<生姜のマインドマップ>

生姜は、どの段階、どの状態であるかによって、その呼び名が変わってきます。

まずは、秋に出回るみずみずしい「新生姜」

スーパーで初夏に見かけるイメージもあると思いますが、本来の旬の時期は、秋。

この新生姜が小指サイズの大きさの時に葉付きで収穫したもののことを「葉生姜」といいます。

そして、新生姜を低温貯蔵し水分が飛び皮が褐色になったものが「ひね生姜」。スーパーで1年中置いてあるものはこちら。

さらに、ひね生姜を100度以下で加熱し、乾燥させたものを「乾姜(カンキョウ)」と呼びます。加熱して乾燥させると、身体を温める効果が、より高くなると言われています。

主な成分は、殺菌、抗炎症効果のあるジンゲロールと、血流改善、温め効果のあるショウガオール

こんな効果のある生姜が、これから寒くなる秋に旬を迎えるので、自然の循環は本当にすごい。

保存方法の中でも、私が一番おすすめしたいのは、薄切りして乾燥させること!

私は乾燥機を使っていますが、盆皿に広げて天日干しすれば、今の季節なら2日くらいで乾くと思います。

生姜は加熱してから乾燥させると温め効果がアップするので、少しだけ蒸してから乾燥させるのもいいですね。

乾燥させて保存しておけば、欲しい時にお料理にポンと入れるだけになるので、とても簡単です!

Tips 2/新生姜とひね生姜

普段のお料理で登場するのは、きっと「新生姜」か「ひね生姜」ですね。

その2種類の使い分けポイントはいくつかあるのですが、私は、合わせる食材とのパンチ力の比較によって、決めることが多いです。

「新生姜」は、みずみずしく爽やかな辛味なので、爽やかで軽やかな食材によく合います。

一方、「ひね生姜」はパンチが強く、ガツンとしているので、こっくりとした少し癖の強い食材によく合います。

そのパンチ力やパワーが同様の食材を合わせるのがポイントです。

例えば、秋になると食べたくなる「秋刀魚と生姜のご飯」には、パンチのある「ひね生姜」を。ふわりと軽やかな「山芋の鶏団子」には、「新生姜」を。

その時に、目の前の生姜の状態によって、「食感」も調整するのがもう一つのポイント

「新生姜」の場合は、そのまま噛んでも軽やかなので、使う時にもみじん切りでOK。「ひね生姜」は、乾燥が進むと繊維が気になってくるので、すり下ろすのが◎。それでも繊維が気になる状態であれば、絞り汁だけにするなど、状態を見定めて、食感を決めていくといいと思います。

Tips 3/生姜ソースであそぶ

これまでのTipsでは、基礎が続いてしまいましたが、Tips 3はいよいよあそびの要素!

ぜひ、生姜でたくさん展開しながら作ってみてほしいのが「生姜ソース」です。

今回ご紹介するレシピは、「ひね生姜」のパンチが効いた「生姜黒胡麻ソース」。ごぼうや蓮根、山芋などの根菜にもよく合う冬のソースです。



生生姜黒胡麻ソース

黒炒り胡麻 大さじ1
ひね生姜(おろす) 小さじ1
黒酢 大さじ1
醤油 大さじ1
ごま油 小さじ2
豆味噌 小さじ1/2
黒糖 小さじ1


黒胡麻は炒り、すり鉢でする。またはすりごまを使う。 そのほかの材料を全てよく混ぜ合わせる。

◎グリルまたはフライパンでこんがりと焼いた厚揚げと椎茸に合わせたサラダがおすすめ。
◎蒸した魚や肉類にかけたり、鍋のタレにしても良いです。


Tips 2で、「新生姜」と「ひね生姜」の特徴は感じていただけたかと思いますが、例えば、「新生姜」を使ったソースをつくるのであれば、爽やかな柚子や柑橘がよく合います。

もちろんそこに、スパイスやハーブを合わせても◎。

「ひね生姜」はスパイスと、「新生姜」はハーブと相性が良いです。

組み合わせ次第で、ソースの広がりは、無限大。それぞれの生姜の特徴を活かして、ぜひあそんでみてくださいね。

今回は、「ひね生姜と新生姜」についてお届けしました。

少し地味なテーマでしたが、とっても奥深くて、組み合わせ次第で楽しくあそべる食材です。

この秋冬も、たくさんお料理を楽しんでみてくださいね。


朝夕|松井理恵

三重県生まれ 料理研究家

様々な食の仕事を経験後、味と香りの幅を広げるためドイツに2年半滞在し、表現としての食のあり方に触れる。

現在は滋賀県を拠点に「朝夕」という屋号で料理教室、料理会、レシピ開発、食まわりのコーディネートなどを行なう。



Instagram: @rie_asayu