▼梅であそぶ|第4回
OSAJI JOURNALでは、「朝夕」という屋号で料理を探求しているりえさんに、月に1度、その時の探求結果を発表してもらう場を設けました。その名も『お料理あそび』。野菜や野草や、季節の香り。軽やかに地球の素材を楽しむりえさんの、その旅路をお裾分けします。
朝夕の松井理恵です。
日々、素材やお料理を探求し、お料理教室をしたり、ときどきお料理を振る舞ったりしています。
第4回目、6月のテーマは「梅」。
梅の季節がやってきましたね。
七十二候では、6/16〜6/20頃を「梅子黄(うめのみきばむ)」といって、青梅だった梅の実が、黄色く色づき始める季節を指します。
今回また「梅のマインドマップ」をつくったのですが、梅のことを調べれば調べるほど、掘るところがたくさん出てきます。まさに沼!
この季節になれば至る所で目にする当たり前の存在だけれど、実は表にして改めて見るとすごい存在です。日本人の今までの知恵がすべて詰まっているのだなぁ、と思います。
〈梅のマインドマップ〉
今年はここまでですが、もっともっと深めたい…!
私のなかでは、梅と米と大豆は、生涯深め続けたい存在です。
Tips 1 /「梅酢」ってすごい!
梅については、正直伝える要素がありすぎて、どこをどうお伝えしていいのやら…。迷ったのですが、今回はあえて、定番の梅ジュースや梅酒、梅干しではなく、梅酢、梅の調味料、あると便利な冷凍梅と梅干しの種にフォーカスしてみたいと思います。
最初は改めて「梅酢」のすごさについて。
みなさんは、「梅酢」を使っていますか?
梅酢には二種類あります。
梅干しをつくる最初の工程で、梅を塩で漬けた時に上がってくるのが「白梅酢」。梅のフルーティな風味をダイレクトに感じることができます。
そして、梅に塩を漬けてから1週間以上おいて、赤紫蘇を加えたところで上がってくるのが「赤梅酢」。(梅干し自体は、そこからまた2週間以上おいて、3日間の天日干しを経て、完成しますね。)
マインドマップにも記しましたが、この「梅酢」の汎用性が、本当にすごいんです。
料理に使えるのはもちろん、それ以外の用途も本当にたくさん…!特に「白梅酢」は、まさに万能の一言。
梅干し用の完熟梅と塩さえあれば、「白梅酢」は出てきます。
その後、梅干しにまでするハードルが高ければ、そのまま梅の塩漬けとして使用するのもアリ。(実際私もそうしてみましたが、これはこれで良いです)
〈memo〉
「白梅酢」の活用法
●おにぎりを握るときに、手につけると腐敗防止に。ちょっと梅の風味を香らせたいときにも。
●新玉ねぎやズッキーニを白梅酢で漬けて重しをしておくと、それだけで美味しい浅漬けに!
●お肉の臭み消しや、お魚の酢〆にも。
●唐揚げやつくねを作るときに、お塩やお酒の代わりに「白梅酢」を使うと、それだけでさっぱりとした下味に!叩いた梅も一緒に揉み込むと爽やかな唐揚げ or つくねになります。
●じゃがいもの下味を塩ではなく白梅酢にしてみるのもおすすめ
●殺菌効果が強いので、うがいや喉スプレーにも
●お弁当に全体的にかけておくと、夏でも傷みにくい
●炭酸水に梅酢(白でも赤でも)を少し入れて飲むと、身体がスッキリします。二日酔いの朝や、ジメジメした暑い朝にぴったり!
先日、味付けは白梅酢と醤油少しだけで、つくねを作ったら、最高に美味しいつくねができました。
材料は、鶏ひき肉、新玉ねぎ、新生姜、山椒、山芋、水切りした豆腐。
「赤梅酢」は、なす、きゅうり、みょうが、かぼちゃなどを漬けておくと、簡易的な柴漬けに。
とうもろこしのおにぎりも、梅酢で結べば、ほんのり梅の香りがして爽やかに。
最近の暑い夏には「梅」が必須ですね。
梅仕事でも大事なのは、作って終わりではなく、その後の活用の仕方。生活って、点ではなく線でずっと続いていくので、私が料理教室でお伝えしていることは、時間軸が長いのだと、最近よく思います。
Tips 2/万能調味料 = 梅味噌と梅醤油
次は「梅味噌」と「梅醤油」。
これも、作り方はシンプルでとっても簡単。
「梅醤油」はヘタをとって、そのまま醤油と一緒に瓶に入れるだけ。(大きな青梅だと切り込みを入れたり穴を空けたりした方が良いかもしれません)
青梅なら、白醤油で漬けると爽やかに。完熟梅なら、普通の醤油でこっくりと。
「梅醤油」も「梅味噌」も、漬け込むのでアク抜きなどは必要なし! 勝手にアクは抜けていきます。
そしてどちらも、冷蔵庫保存で1年くらいで使い切ると風味が変わらず美味しく頂けます。
「梅味噌」も、糖分と混ぜた味噌の中に、ヘタをとった梅をポンポンと置くだけ。
私の好みでいうと、青梅は熟成味噌にみりんで甘みを付けるのが好きで、完熟梅なら甘味のある味噌に甘麹で甘みを付けるのが好きです。
初めのうちはエキスが出てくるので、一日一回は混ぜたほうがいいです。2週間〜1ヶ月ほどして水分が出なくなったら、梅を取り出すか、梅も一緒にペーストしてもいいですね。
もし梅を取り出すのであれば、刻んで薬味として使っても美味しい!ソースにしたり、ごまだれに加えたり…。
〈memo〉
「梅醤油」の活用法
●刺身醤油として
●おひたしや焼きナスに
●冷ややっこに
●刻んでおにぎりの具材に
●オイルと合わせてサラダのドレッシングに
「梅味噌」の活用法
●きゅうりをつけて食べると最高!
●焼きおにぎりに
●お味噌を使う料理に、そのまま。
お味噌汁に入れる時は、100%梅味噌だと酸っぱいので、暑い日のお味噌汁にアクセントでいれる程度でOK。
●豚肉の梅味噌づけに
●そのまま舐めても、普通にご飯に乗せるだけでも十分美味しい
●焼いた肉魚や厚揚げに添えても
… などなど、活用法はいくらでも◎
調味料系は、たくさん作りすぎてしまうことがよくあると思うのですが、それよりは、使い切れる分だけ作って、ちょっと足りないくらいがちょうど良いかもしれません。
梅や醤油、味噌の種類を変えるだけで風味も変わってくるので、色々試してみてくださいね。
Tips 3/冷蔵庫にあると便利シリーズ(冷凍梅と梅干しの種)
最後に「冷蔵庫にあると便利シリーズ」をご紹介します。
まずは「冷凍梅」。
少し傷んでしまった梅は、青梅でも完熟梅でもどちらでも、ジップロックに入れて冷凍しておくと便利です。完熟梅だとフルーティ、青梅だとキリッとします。
使い方は、冷凍庫から取り出した冷凍梅を、料理に一粒ポンっと加えるだけ。
次に「梅干しの種」。
これは意外に思われるかもしれませんが、梅干しは種まで十分な効果があります。
私は、お料理で梅を使うときに種が出たら、それを小瓶に入れて取っておきます。
種のみを、お吸い物のお出汁に入れたり、ご飯に入れて炊いたり。ほんのりと梅の風味が出るし、夏はそれだけでご飯が傷みにくくなるんです。
〈memo〉
冷凍梅の活用法
●酸味として使うと、レモンやクエン酸の代わりに
●カレーに入れると南インドの魚やココナッツのカレーに入っている酸味のある「タマリンド」の代わりにも。
●お魚や豚肉を煮るときにをつくるときに
カレイとヤングコーンや山椒と冷凍梅を一緒に煮付けにすると、美味しそうだなぁ。
記事ではご紹介しきれませんでしたが、蜜煮や梅ジャムなど、お砂糖と合わせた甘い梅も大好き。
私は梅と黒文字の組み合わせが好きなので、そんなデザートもいいですね。バラとも相性が良さそうです。
今回は、「梅」のことについてお届けしました。(まだまだ語り足りない!)
梅仕事も、そのあとの活用が、一番楽しいポイントだったりします。みなさまも、梅のお料理あそび、楽しんでくださいね。
PROFILE
松井理恵
「朝夕」主宰 | 料理研究家
三重県生まれ。様々な食の仕事を経験後、味と香りの幅を広げるためドイツに2年半滞在し、表現としての食のあり方に触れる。現在は滋賀県を拠点に「朝夕」という屋号で料理教室、料理会、レシピ開発、食まわりのコーディネートなどを行なう。