▼メイクに正解をもとめない。 | 第6回

OSAJIメイクアップアーティストとして日々、直営店やOSAJI取り扱い店舗で、お客さまに実際にメイクレッスンをさせていただいたり、スタッフへのトレーニングや撮影業務、メイクアイテムの開発などに関わっております。
私がメイクを通してお伝えしたいのは“メイクを心から楽しんでもらいたい、そしてメイクには心を動かす力が宿っており、ご自身に留まらず周囲の方の「笑顔」が増える”ということ。この連載ではその想いをお伝えできたらと思っています。
OSAJI メイクアップアーティスト
後藤勇也
第6回
メイクに正解をもとめない。
プロが同じアイテムで同じメイクをしても違って見えるもの。

メイクの道を進んで25年目。いまだに分からないことがあります。それは言い換えると、いまだに興味をそそり、探求し続けていることでもあります。
以前に働いていた化粧品メーカーで、新色が発売された際のプロモーションイベントでの出来事です。
ブランドがイチオシのメイクアイテムを使って、お客様全員へ同じメイクを提案していくのです。全く同じメイクパターンを十人程のメイクアップアーティストたちが一斉に行うのですが、 誰一人として同じ印象にはならず全く違う仕上がりになるのです。
骨格やパーツの個性も違うので当たり前のことかもしれませんが、同じ色で同じメイクステップで仕上げても、人それぞれに異なる印象に仕上がることにとても驚いた記憶があります。
またある時は、ひとりのモデルに、メイクアップアーティストが日替わりで同じカラー、同じ配置のメイクを施しました。同じ顔のモデルに、同じメイクパターン。それなのに、やはりメイクをするアーティストによって仕上がりの印象が全然違うのです!
完璧を求めすぎず、自分らしさを大切に。

突き詰めて考えると、ブラシの動かし方や圧の掛け方、グラデーションの強弱、アイシャドウの範囲やまつ毛の角度など、細かな手技の違いはもちろんあります。でも私は、ひとつとして同じ仕上がりにならない理由は別のところにあり、そしてそれこそがメイクの真髄なのではと感じています。
感覚的な話になってしまいますが、何のアイテムを使うかや、どうメイクするかよりも、メイクをするひとの性格やその時の感情が、メイクに現れているのではないかと思うのです。メイクを施されたひともまた、メイクをしたことによる心の変化があり、メイクをされたお客様の感情がポジティブに動くと、とても良い表情や雰囲気を醸し出すと思います。
メイクの可能性を楽しむために、まずは直感を信じて。
つまりは、みなさんが「この色かわいい!」「このメイクかわいい!」と感じた“ときめき”の感情が湧き上がったメイクアイテムを使用することで、表情やしぐさなど、マインドに働きかけることがとても大きいのではないかと私は思います。
そしてこのエピソードを通して私がお伝えしたいことは、同じアイテムで同じメイクをしたって、同じ顔にはならないのだから、メイクに正解などなく、こうしなければいけないなんて決まりもない。プロのアーティストがプロのモデルにしても、違って見えるものなのだから。
メイクに正解を求めず、ぜひ、自分が手にとってワクワクすること、メイクをした自分に、ちょっと心が踊ることを大切に、気楽な気持ちで楽しんでみてくださいね。
今日のメイクが気持ちに彩りを添え、みなさまの笑顔に繋がりますように。

PROFILE
後藤勇也
OSAJI メイクアップアーティスト
多数のメイクブランドでのメイクアップアーティスト経験を経て、2020年より「OSAJI」 に入社。社内外のイベントでのデモンストレーションやスタッフの育成に取り組んでいる。OSAJIらしい、その人自身の魅力を惹きたてながら寄り添うメイクが好評。
Interview:Ayumi Oguma