▼最近の気づき。 | 第10回
OSAJIメイクアップアーティストとして、日々お客さまへのメイクレッスンやスタッフのトレーニング、撮影、メイクアイテムの開発などに携わっています。また、インスタLIVEやメイクイベントを通じて、OSAJIのメイクをより多くの方に知っていただく活動も行っています。
私がメイクを通してお伝えしたいのは、“メイクを心から楽しんでもらいたい” 、そして、メイクには心を動かす力が宿っており、ご自身に留まらず、周囲の方の「笑顔」も増やしてくれること。この連載では、その想いをお伝えできたらと思います。
OSAJI メイクアップアーティスト
後藤勇也
第10回
最近の気づき。
色に触れるということ。

色に触れる時間は、不思議と心がほどける。季節が巡るように、OSAJIのメイクアイテムにも、少しずつ新しい色や質感が生まれていきます。
それははっきりとした輪郭を持って現れるというより、その時々の空気や気配をすくい取るように、静かに形になっていくもののように感じています。
鏡の前で、ふと表情がゆるむ瞬間。
「なんだか、いいかんじですね」
「しっくりきます」
「今日はこの色を試してみたい」
そんな何気ない言葉を耳にするたびに、メイクは“整えるためのもの”ではなく、気分や感情にそっと触れる行為なのだと思います。新しい色やアイテムの話をするとき、私はいつも、頭より先に体が覚えている直感や感覚を信じています。
日常の中で、どんな朝に使いたくなるか。どんな気持ちの日に、そっと寄り添ってくれるか。
色をのせたその人自身の心に少しだけ余白が生まれ、柔らかさが出るかどうか。
OSAJIのメイクアップコレクションディレクターであるAYANAさんが話す「メイクは自由でいい」「正解はひとつじゃない」という言葉の通り、OSAJIのニュアンスカラーは、単色のままでもいいし、重ねるほどにその人らしさを引き出してくれます。
主張しすぎることなく、でも確かに、内側にある光を照らす色。その曖昧さこそが、メイクの楽しさなのだと思っています。
遠くの空気に触れたとき。

少し前、台湾の気候や市場の空気に触れながら、OSAJIとして何を届けられるのかを探る時間がありました。その時間を、AYANAさんと共に過ごしました。
湿度を含んだ空気、街の色、人の距離感。日常とは異なるリズムの中に身を置くと、メイクに求められているものも、自然と違って見えてきます。
高温多湿な気候の中では、崩れにくさや軽やかさが、ひとつの大きな関心事として立ち上がってきます。店頭に並ぶアイテムや、交わされる会話の端々から、その土地ならではの感覚が、静かに伝わってくるようでした。
現地では、ロングラスティング効果を備えたリキッドファンデーションが主流。
この価値観を起点に、次なる開発の可能性を描くというのがテーマ。そんな中で、私の心に残ったのは、AYANAさんがすぐに「次の何か」に進むよりも、「いま、この場所で、いちばん大切なことは何だろう」そう問いかけるように一度立ち止まり、すでにあるものに、もう一度丁寧に目を向けていく。
事前の何気ない会話から私の考えも自然と汲み取りながら、まずはいまあるアイテムが持つ特性や、OSAJIがこれまで大切にしてきた考え方を、言葉を選びながら伝えていく。
現地の背景を汲み取りつつ、崩れにくさと軽やかさの両立において、『ニュアンス スキンスケッチ ファンデーション』は確かな存在感を放っています。スティックタイプの浸透度は日本と異なるかもしれませんが、その背景を丁寧に共有し、理解を深めていただきます。
新しい提案を急ぐのではなく、目の前の相手に、きちんと理解してもらう。そのために、いま何を手渡すべきなのかを、静かに見極めているようでした。
相手が求めている言葉の奥にある理由や背景に耳を澄ませ、その場にふさわしい形で、想いを届けていく。
その姿に触れて、「言葉のままに動くのではなく、本当に大切なものはどこにあるのか」「丁寧に向き合うことが、信頼につながっていく」という感覚が、自分の中に深く残りました。
この感覚は、メイクアップアーティストとして日々お客様と向き合う時間の中にも通じる、これからも大切にしていきたい姿勢です。
表層ではなく、本質へ。

目の前の違和感をすぐに消すのではなく、なぜそう感じたのかを見つめる。それは、メイクに触れる時間の中でも、私が大切にしていきたいことのひとつです。
色を重ねることで、心がふっと軽くなる瞬間があります。
その変化はとても小さくて、言葉にしづらいけれど、確かにそこにあるもの。鏡の前で、表情がやわらぐ瞬間を思い浮かべながら、これからも、その人の感覚に寄り添うメイクを届けていきたいと思っています。
PROFILE
後藤勇也
OSAJI メイクアップアーティスト
多数のメイクブランドでのメイクアップアーティスト経験を経て、2020年より「OSAJI」 に入社。社内外のイベントでのデモンストレーションやスタッフの育成に取り組んでいる。OSAJIらしい、その人自身の魅力を惹きたてながら寄り添うメイクが好評。
Interview:Ayumi Oguma